> コラム > 伊原吉之助教授の読書室
伊原註:以下は、 『 關西師友 』 平成21年2月號に掲載した 「 世界の話題 」 ( 230 ) です。
若干増補してあります。
根幹は國防と教育
我國の基本課題
書初が正月2日であるやうに、月刊誌の連載の新年執筆分は2月號に載ります。
そこで 「 年頭に當つて 」 今年の課題を考へました。
國防と教育、これに盡きます。
豫て尊敬する西村眞悟衆議院議員が 「 國防だよ、馬鹿! 」 It's National Defense, Stupid!といふ年頭の辭を書いてをられます。
ソ聯が解體した時期の米國の大統領選で團塊の世代のクリントンが父ブッシュに挑戰した時のキャッチフレーズが 「 經濟だよ、馬鹿! 」 It's Economy, Stupid! だつたのをもじつて 「 經濟 」 を 「 國防 」 に置換へたのです。
解散・總選擧を前にして民主黨が票集めの迎合キャッチフレーズとして 「 生活第一だよ、馬鹿! 」 とやつてゐるのを見て、 「 國防だよ、馬鹿! 」 とやり返した譯です。
西村さんの結論=強い日本、明るい日本、誇高い日本を作らねばなりません。
その着手點は先づ國防、そして教育です。
全く同感なので、私も 「 國防と教育 」 について書いてをきます。
どちらも泥繩が利かぬ重大問題なのに、我國は長期に亙つて疎かにして來ました。
國防の急務
我國の防衛が如何に危ふいかは、以下の書物を讀めば一目瞭然です。
伊藤 貫 ( 『 中國の 「 核 」 が世界を制す 』 ( PHP研究所、2006.3.8 )
平松茂雄 『 中國は日本を併合する 』 ( 講談社、2006.3.15 )
〃 『 中國は日本を奪ひ盡す 』 ( PHP研究所、2007.3.9 )
〃 『 「 中國の戰爭 」 に日本は絶對捲込まれる 』 ( 徳間書店、2008.6.30 )
いや、本など讀まなくても常識があれば明かなのに、皆さん、見て見ぬふりを續けて來ました。
專守防衛とは横綱相撲です。相手の攻撃を受けて立つには、力量に格段の差が求められるのに、 「 攻撃しないから輕武装でよい 」 として來ました。
何たる欺瞞! 何たる背理!
「 攻めて來たら攻撃基地を徹底的に叩き潰すぞ 」 と言へる實力なしに、抑止力は生じません。
だから、日本が本氣で 「 專守防衛 」 に徹するつもりなら、仮想敵の三倍以上の武力が不可缺です。
今や世界的不景氣で失業者が殖えて居ます。それならこの機會に自衛隊員を倍増、いや三倍増しませう。
特に空と海と情報です。
更に國防の大事さを體得して貰ふため、全公務員に 「 忠誠宣誓 」 を求め、半年の國防最前線 ( 海空 ) 勤務を義務付けませう。
武器は自主開發を原則とし、費用低下のため、また國際平和に寄與するため、輸出を奬勵する。
そして斷乎、核武裝する。
當面は、米國の核を賃貸しても宜しい。英國式に發射ボタンを米國と分擔し、合意の上でボタンを押すことにする。そして急遽、核ミサイルと核ミサイル搭載の原潛を作る。
教育で人材育成
教育の基本は二つ、國語に熟達することと、文武兩道の體得です。
因みに、武道の修行とは、克己心の養成が基本です。己に勝てずに敵に勝てる譯がないからです。
略字・漢字制限・現代假名遣ひで國語教育を手抜きしたため、今や日本の大學生の意思疏通能力が格段に低下しました。語彙も極端に尠く、話せるのは仲間言葉だけ。餘所行言葉が話せない。
俗語と丁寧語が使分けられずに、日本語と英語の使分けが出來ませうか?
江戸時代の寺子屋では 「 讀み書き算盤 」 を教へましたが、現在の日本の大學生の讀み書き算盤能力は江戸時代の子供に格段に劣ります。
核家族化で言語環境が母親とテレビに限られ、祖父母からも近隣の人々からも學べなくなつたことも、國語習得には逆境でした。昔は兄弟の數も多く、まず兄弟間で揉まれ鍛へられ、次いで近隣の同年齢グループに入つて揉まれ、隣近所の顔見知りから聲をかけられました。言語學習の機會はふんだんにあつたのです。
それが今や核家族で一人つ子が多く、個室で機器相手に育ちますから、言語習得、とりわけ矯正の機會が極端に尠くなりました。それにテレビがいけない。變などぎつい言葉を教へ、正調日本語の習得・磨き上げを阻害してゐます。
教育の目標は、獨立自尊の人材を育てることです。
その根幹たる國語教育の基本は、音讀と筆寫です。
音讀しないから識者でも讀み間違ふし、古典を筆寫しないから想像力も表現力も育たない。
戰後六十年、基本を疎かにして來た結果が日本人の崩壞を招きました。
基本に歸れば立直ります。
( 09.1.4/2.9増補 )