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社会動学セミナー・平成18年10月18日 ( 水 ) 大阪産業創造館 6F-C
ジョージ H.カー ( 蕭成美訳・川平朝清監修 )
『 裏切られた台湾 』 ( 同時代社、2006.6.26 )
帝塚山大学名誉教授
伊原吉之助
原 書:George H.Kerr, Formasa Betrayed, 1965
中文訳:陳榮成翻譯 『 被出賣的台灣 』 ( 前衛出版社、1991.3./1992.2. 四刷 )
「 戦後台湾の出発点 」 がよく判る本/ 「 中国人 」 のえげつなさがよく判る本/米国の国際問題処理のいい加減さもよく判る本
( 以下、行端の数字は頁数を示す )
i スカラピーノ の 序文:台湾= アメリカ の ディレンマ の 象徴 ( 伊原注:米戦後政策の無責任! )
v ウェデマイヤー 「 問題の核心 」 :中国政府は台湾に 「 腐り切った貪欲な政府 」 を齎した。
伊原注:その政府を台湾人は大歓迎した。台湾人の無知・無邪気!
→台湾人は 「 蔣介石は原爆より酷い 」 とぼやくが、毛沢東よりずっとマシ
11 蕭成美・川平朝清 「 カール先生について 」 :
1 ) Kerr の 父は長老教会の牧師 ( 14 ) 。台湾長老教会= 「 台独派の拠点 」
2 ) 米国海軍は台湾占領を予定/マッカーサー が フィリピン に拘り、台湾を跳ばして沖縄へ ( 17 )
3 ) 台湾に全く無関心だった中華民国政府 ( 19 ) 。
26 序章 ある僻地の伝説:台湾は 独立した島? 大陸の付属物?
28 台湾住民=原住民 ( 平埔族+山地族 ) +海賊・難民/台湾=瘴癘の地・化外の民
34 第一章 カイロ宣言:米国──対日開戦後、慌てて兵要地誌情報を集める
中国──台湾に無知/中国式情報提供。cf. 中国人と面子の密接な関係
→伊原注:阿Qそのまま。つまり、実力がないのに面子にばかりこだわる!
面子を重んずるなら、それにふさわしい実力をつける必要があるのに、その努力はしない。
つまり、サボリの癖に、誇りだけ高い。力のない時は屈従し、力を持つと好き勝手に振舞う。
40 謝南光の画策 ( 邪魔者にケチつけ )
米国の占領計画を見て台湾の富に注目した蒋一派 → カイロ で要求 ( 琉球も )
41 騙しの名人、中国人
→伊原注:中国人は演技の名人。日本人はその対極。
中国人=玉葱。日本人= シースルー ( 衣をめくらなくても鎧が見える )
45 米軍の台湾処理案:
1 ) 自治 ( 独立 )
2 ) 中華民国へ渡す。
3 ) 連合国の信託統治に委ねた後、国民投票で帰属を決める。
台湾:戦略的重要拠点・半世紀に亘って大陸から切断され、その間に近代化・文明化した。
→伊原注:前近代・前文明の中国に、近代化した文明台湾を統治する能力も人材もなし
( 注 ) ここでいう 「 文明 」 とは、司馬遼太郎が李登輝との対談で言った 「 牛乳を配達しても盗られる心配のない社会 」 をいう。中国=泥棒横行社会・他人が信用できぬ社会。
だが中国を無視できず。FDR が 「 蔣介石は民主的指導者、中国が強国 」 と 見做して援助したから。
→伊原注:FDR の 近所迷惑。彼の東アジア に 対する無知と偏見が、どれだけ戦後の無用の混乱を招いたことか!
49 米の暴論:台湾人は中国人の子孫 しかも 「 たったの五百万人 」 。 「 中国から逃れた 」 点を無視
50 カイロ 会談:蔣介石、台湾を要求/米に10億ドルの借款を要請。→ FDR, 蒋の腐敗を疑い始める
→米の一部、延安の中共に期待/副大統領ウォーレス を 視察に派遣/蒋、対日妥協を考慮……
53 「 歴史的事実誤認 」 の禍:台湾・澎湖諸島は日本が中国から 「 盗取 」 したものではない。
→伊原注:ついでに言っておくと、日本は台湾を 「 領有 」 し台湾人を 「 一視同仁 」 して初等教育を施した。 「 植民地化した 」 のではない。日本以外のどの列強が 「 獲得領土 」 「 植民地 」 で初等教育を施したか?
56 第二章 「 X島 」 →米国の台湾売渡し!
ニミッツ の台湾占領計画 →FDR が マッカーサー の ルソン侵攻策を採用。
台湾占領を予定していた米海軍は、台湾を超ばして沖縄侵攻へ。台湾は空爆だけ
67 アメリカ の罪:宣伝ビラ で 「 アメリカ の指導で生れ変った新中国 」 と PR。 →台湾人の対米期待↑
68 日本は連合国に降伏: マッカーサー が 台湾を中華民国に占領させ、中国領にされる 「 手違い 」 発生
欧州で アイゼンハワー が ソ連に プラハ と ベルリン の 占領を許し、ソ連側に入ったのと好一対の失策
1944年半ば:蔣介石一味 ( 国民党 ) は腐敗堕落により、全中国人から見放されていた。
72 1944.11.1 駐華米大使交代: クラーレンス・ガウス → パトリック・ハーレイ 陸軍少將。国共合作案→ マーシャル將軍派遣
→伊原注:マーシャル は ソ連の手先だったと告発したのが、下記の書物。
ジョセフ・マッカーシー ( 副島隆彦監修・解説/本原俊裕訳 ) 『 共産中国はアメリカがつくった──G.マーシャル の 背信外交 』 ( 成甲書房、2005.12.25 )
下記の本と併せ読むと、II大戦中・戦後のアメリカがいかにソ連の手先に操られていたかが判る。
コーネル・シンプソン ( 太田龍監修・解説/佐々木槙訳 ) 『 国防長官はなぜ死んだのか──フォレスタル怪死と戦後体制の大虚構 』 ( 成甲書房、2005.12.5 )
米海軍は台湾保持を考慮/陸軍 と ホワイトハウス は早期復員を求め、台湾を中華民国に委ねる。
74 米国:台湾五百万住民の意向無視 ( それでも民主国? ) 。 「 中国第一主義者 」 「 宣教師路線 」 が物を言う。
75 ウェデマイヤー, 蔣介石と協議し、台湾の管理を引渡す。→国務省: 「 台湾問題は一件落着 」
78 蔣介石、福建省で悪政をやり、日本軍と取引した陳儀を台湾の行政長官に任命 ( 蒋の子分養成法 )
90 第三章 日本降伏
台湾人、米に期待。米の保護下に 「 新中国再建 」 の一翼を担う、と意気込む。
101 陳儀の人員、米軍艦艇で台湾進駐。台湾人を 「 化外の地に住む二等公民 」 として全面屈従さす。
「 敵地 」 に乗込んだ気分で片っ端から 「 略奪没収 」 →台湾人は軽蔑。 「 面子 」 問題発生!
111 第四章 軍服のアメリカ人
米軍人、 「 屑のような中国兵 」 を軽蔑。→面子問題発生。国民党、米兵を憎悪。 「 台湾から追出す! 」
戴笠とその手下:台湾人に日本人の大量殺戮を指示。→台湾人、動かず。
123 米陸軍顧問団の話題:中国人の無能・不正直・不誠実・臆病etc. →台湾人・日本人に同情
126 米大使館の建物を物色した時、中国人、米人の面子潰しを謀る。
128 OSS部員の台湾人世論調査:中国統治? 日本統治? 国連信託統治? どれを選ぶ? →中国側、大憤激
129 米軍、日本軍送還を繰上げて済ませ、1946.4. 去る。
131 第五章 陳儀政府=悪徳商人の政府 → 「 犬去りて豚来る 」
略奪 の 3段階:下級将校=こそ泥
中堅将校=組織的略奪
陳儀と腹心=根こそぎ略奪→ 228事件ヘ
140 台湾人に公衆の面前で笑われた中国人将校。→面子問題 ( 228事件の遠因 )
144 台湾人の想像を絶した中国人の悪辣な行動:隠匿米摘発運動→台湾の中小地主潰し?
152 無能のため日本人を留用した中国人 →面子を保つため 「 留用嘆願書 」 を書かせた。
157 接収日本資産=政府資産 ( 日本政府・総督府 )
公共資産 ( 学校・病院など )
私有財産 ( 企業・個人 )
159 この時、武器弾薬を除き40億〜50億米ドルの賠償金を日本が中国に支払ったことになる。
→伊原注:朝鮮・満洲・中国でも、台湾同様、政府資産・公的資産・私有財産をすっかり置いてきたから、日本は莫大な賠償金を支払っていることになる。 「 賠償金を負けてやった 」 と中国人がいうのは大間違いである。
「 中国第一主義 」 の 国務省の基本方針= 「 盗まれた財産 」 が元の持主に戻った、との解釈で押切る
カーの結論=この莫大な財産接収は、中国政府にも中国人民にも余り利益を齎さず
161 第六章 陳儀の必然的国家社会主義体制 →民間をすっからかんにひん剥く策
台湾人の思惑:日本政府の資産→中央政府
台湾総督府の資産→地方政府
日本人の私有財産→信託財産→島民に競売して島民福祉に貢献
千円札の 1年間凍結措置: ワル で ズル の上海人に叶わなかった ウブ な 台湾人!
166 中国政府= 「 悪徳商人 」
製造業 ( 第二次産業 ) と無縁。工場を機能不全に陥れ、最後は設備を叩き売る。
→悪性インフレ/物資不足/給料遅配・欠配/乞食出現。
陳儀の狙い=台湾の生活水準を大陸並に落すこと? 要するに 「 奪うこと 」 しか考えず
181 第七章 歓迎されない目撃者達
1946.5. アメリカ領事館・国連救済復興機関 UNRRA, 台北に設置。→中国人、喜ばず!
183 国務省= 「 台湾はもう中国なのだ 」 「 俺たちの知ったことではない 」 「 問題はそのうち消滅する 」
→米紙、 「 台湾の スキャンダル 」 を 報道・論評。腐敗汚職の中国人統治が富める島を搾取しているゾ!
米領事館の精神分裂症:US Information Service, 民主と人権を宣伝
外交官は台湾人民など知らぬ顔 ( 厄介ごとを抱え込む気など、まるで無し )
カー と USIS 館員 は 「 緊張高まる台湾情勢を報告する義務 」 を痛感
ひたすら無事を願う国務省は、この報告を歓迎せず。
193 陳儀の逆宣伝 「 台湾の復興は目覚ましい! 」 /費用丸抱えで米記者26人を台湾に招待、接待攻め
→伊原注: 「 宣伝 」 「 口舌 」 で事態を誤魔化す中国人/ 「 歴史改竄 」 の長い伝統あり
199 第八章 UNRRA と CNRRA の 歴史
欧州では UNRRA の物資は末端まで管理権あり。中国では宋一派に渡して終り。
→戦争中から続く宋一派の米援独占的取込み
205 詐欺的な CNRRA の プログラム。政府が米を農民から安く買上げ、隠匿後高価で売出す。
→悪劣な政府! と カーは書くが、中国の伝統とも言える。
贈与の肥料を私物化した陳儀は農民に高く売り、30万米ドル以上の利得を懐に入れる。
211 電力と運輸の供給悪化→台湾の衛生環境、19世紀に逆行、ペスト、 コレラ が復帰。
→食糧供給、中断。叛乱誘発へ
→伊原注: 228事件を惹起した主因は 「 悪劣な政府 」 であって台湾人ではない!
231 第九章 台湾人の話──幻滅の一年
日本の台湾に対する最大の貢献=社会の安寧・法治を実現したこと
陳儀の検事総長が最高法院の官印を捺した偽造文書を乱発、彼の子分がそれで私有財産を没収
善人をひん剥く陳儀の警察:警察の豚箱は私怨や言掛かりでいい加減な告発を受けた人で充満
241 1946.2.-3.人民政治委員会、選挙。5.1 開会 ( 陳儀の舞台装置 ) 。 →本土派と対立・激突
教育庁長范壽康の弁明=無能を露呈。
台湾警備総司令柯遠芬上將の演説=残忍非情・傲岸不遜を暴露
本土派=不平不満を列挙/大勢が自己宣伝に努め、ばらばらで団結できぬ台湾人の悲哀を露呈
反政府勢力の抬頭:郭國基、王添燈、廖文圭・廖文毅兄弟ら。
250 第十章 承認を求めて:台湾人の縋る先=南京 ( 蔣介石 ) ? 東京? ワシントン? 国連?
台湾報道界、問題点を明示:林茂生= 「 三民主義を台湾で実施せぬ限り、中華民国の前途は暗黒 」
政治団体続出。政論紙叢出。中国人は断乎弾圧の姿勢。 「 陳儀はいい人だが、部下が悪かった 」 論
261 カー, 外国を熟知する台湾人 7人と会食:彼らの願い=中国の一省に留まるが、暫く米国に信託統治してほしい……。でないと、中国人に丸裸にされてしまう
263 或る台湾青年= 「 我等 670万台湾人の解放のため、第一にアメリカ、第二に日本を頼らねばならない 」
264 マーシャル將軍が国民政府を破滅から救うべく……/しかし 蒋はその忠告を聞入れようとせず……
→No! cf. マッカーシー 『 共産中国 は アメリカ が つくった:G.マーシャル の 背信外交 』 ( 成甲書房, 2005.12.25 )
46.10.25 蔣介石夫妻、 「 台湾光復一周年紀念會 」 に 出席。台湾人、冷遇
台湾の一部に叛乱の兆↑/USISが 米デモクラシー礼賛の パンフ を 配布/12.12 II人民政治委大会、召集
政府の公式報告は依然不正確・不誠実/大会は怒号氾濫/激烈な応酬
→新聞が毎日報道/それを読んだ台湾民衆、陳儀政府に幻滅↑
281 第十一章 惨事の前夜:陳儀、大陸での敗退を予見し、大陸離脱の準備に益々台湾をひん剥く
豊かな台湾にこれまで共産主義は無縁。→1946年末、台湾、窮迫し、共産党活躍の余地が出現!
1947.1. 1 中華民国憲法、公布。→ 1947.12.25 施行。台湾人=蔣介石の誠意を見る最後の試金石!
1.10 陳儀、台湾人への第一撃= 「 中華民国憲法は台湾に適用されない 」 と発表。
1.12 陳儀、財政困難→公務員の 20% 解雇を発表:新来の中国人に ポスト を 明けるための措置
2. 1 陳儀、台湾人への第二撃=接収日系財産の売買から台湾人を排除
2.12 財政庁、外国為替・両替相場に関する新規則発表:通関手続きを恣意的に改変
→その日その日、手段を選ばず、出来るだけの金を掴み、大崩壊時にその金を持って逃げる!
2.15 陳儀、台湾人への第三撃=台湾私企業潰し:台湾銀行、陳儀の命により台湾人事業家から
貸付けた事業資金の 2割を取立てて軒並み破産さす
2月中旬、或る台湾青年が マーシャル国務長官宛の嘆願書を持参: 「 台湾を国連が管理し、数年間大
陸から切離して下さい。さもないと台湾は中国人に丸裸にされます…… 」
306 第十二章 228事件 →台湾人はなお 「 陳儀行政長官への善政嘆願 」 をした! お人好し!!
324 第十三章 タウン ミーティング ( 市民大会 ) ──アメリカン・スタイル
346 第十四章 三月の大虐殺 →日本時代に育った エリート の一掃。叛乱の芽を摘むため
368 第十五章 余 波
392 第十六章 革新政府
420 第十七章 台湾へ退却
→蔣介石、 「 中華民国は亡びた! 」 と嘆く/思い直して再出発/ 「 一中を争う二中 」 へ
446 第十八章 転 機
466 第十九章 「 米国共和党の10年 」 下の台湾
488 第二十章 見せかけ改革の裏
510 第二十一章 二つの中国?
528 第二十二章 自由台湾