中国の問題点を警告する二冊

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紹 介:


中国の問題点を警告する二冊


宮崎正弘 『 中国は猛毒を撒きちらして自滅する 』

( 徳間書店、2007.9.30 )  1600円+税


周勍 ( 廖建龍訳 ) 『 中国の危ない食品──中国食品安全現状調査 』

( 草思社、2007.10.5 )  1400円+税


 似たような本を二冊、続けて読みました。

 宮崎正弘さんの本は、表紙に 「 全世界バブル崩壊の引き金を引くのも中国 」 とあるように、食品以外の問題にも触れています。目次が端的に扱う問題を示しています。


プロローグ 世界に拡がる中国の 「 猛毒 」 排斥

第1章 果てしなき猛毒事件の数々

第2章 環境汚染の猛毒的な進行

第3章 迫り来る上海発世界大暴落

第4章 中国人民の 「 反日 」 の実態

第5章 中国人は 「 息を吐くように嘘をつく 」

第6章 蔓延する博打とカルトとスノビズム

第7章 中国ビジネスは危険がいっぱい

第8章 中国がひた隠す 「 不都合な真実 」

第9章 台湾問題の新たな展開

エピローグ 情報戦争に連敗続く日本


 宮崎さんは 「 宮崎正弘の国際ニュース・早読み 」 というブログで世界各地の様々な問題を手際よく紹介・分析しておられます。世界を自ら駆けめぐって自分で見てきた上での報告なので、国際情勢に関心を持つ人の必読のブログの一つです。


 こうして纏められたものを一気に読み返すと、改めて宮崎さんの問題解析の手際のよさを感じます。新聞やテレビのニュースで断片的知識を得ている私たちですが、それらをうまく纏めて把握しておかないと自分の意見を構築できません。受け売りにとどまるのです。


 本書は、初めから読み通してもよいし、各章ごとにでも、ぱっと開いた頁の拾い読みでもよい。好き勝手な読み方をして、その度に収穫が得られる得難い書物です。各頁に 「 智慧深い指摘 」 が散りばめてある貴重な本であります。


 ちょっと拾い読みして見ましょう。


 21頁 中国経済、狂乱の時代が始まった。

 26頁 中国人 ( は ) 最後の最後まで自分の責任を認めようとしない。それがかえって世界の不信を買った。

 35頁 ニセモノは中華文化の本質

 60頁 地盤沈下の激しい上海は海に沈む危険性がある。

 63頁 戦後60年、いまも性奴隷、強制連行が存在する国があるのに、米国議会は何を血迷っているのか。

 91頁 中国共産党が最も得意とする技は謀略と陰謀である。

120頁 中国軍は 「 人民解放軍 」 という奇妙な名前だが、実態は 「 人民抑圧暴力装置 」 だ。時には 「 共産党高官だけを守る暴力団 」 と言い換えてもよい。

123頁 中華文明、中華思想というやっかいな化け物……

128頁 こうして現場を歩いてみると、日本のマスコミが大げさに報じている反日感情なるものが、実は中国人の記憶の彼方に去って風化しており、むしろ庶民は中国共産党の嘘にホトホト嫌気していることが分かる。

137頁 最新医学は脳の断層写真撮影に成功し、 「 嘘をつくときは 7ヶ所、本当のことを話しているときは 4ヶ所が活性化している 」 事実を証明した。日本人は日常生活で嘘をつかなくても生きて行けるから脳は活性化しない。中国人の頭の良さ、というより悪賢さには、日本人はどうあがいても敵わない。

137頁以下 成長率の数字もごまかし=筆者は前々から中国の公式 GDP成長率はデタラメだと主張してきた。ピッツバーグ大学のロースキ教授が数年前に 「 ある年の経済成長が 8% と発表された時の電力消費が 10%落ち込んでいた 」 として、 「 過去20年間、中国の経済成長の平均は 3-4% 」 と発表した。MIT の レスター・サロー教授も 「 アメリカ経済を今世紀末に中国が超えることなどあり得ない。アメリカ人の平均所得は 4万3000ドル、中国は1000ドル。これで中国がアメリカ経済を超える事態は22世紀末でしか起き得ない。都市部の急速な発達が中国の経済成長の 7割を支えているとして、10% 成長するには都市部が 33%成長していなければ計算に合わない。中国の過去10年の成長率は精々 4-5%だ 」 ( IHT, 2007.8.21付 )

146-147頁 ある日、武器庫がカラになっていた=調べてみたら、中国各地の武器庫がカラになっていた。保管されていた筈の戦闘機、戦車、装甲車、小銃、戦略用燃料、大量の野戦ベッド、軍靴など軍需物資が忽然と消え、転売されていたというお話。

 宮崎さんの結論=あの 「 軍事大国 」 もまた張り子の虎なのである。


 さて、周勍 ( 廖建龍訳 ) 『 中国の危ない食品──中国食品安全現状調査 』 です。


 この本は、著者 ( 周勍 ) と訳者 ( 廖建龍 ) との共著といっていい作品です。

 本書は昨年、ドイツの 「 ユリシーズ国際ルポルタージュ文学賞 」 を受賞していますから、今年世界各地で勃発した中国製品の毒物騒ぎは書かれていません。それを訳者が補い、最後に北京まで行って著者にインタヴューし、その記録もうしろに付けています。

 著者 は最近、本訳書の発売 ( 10月2日 ) に合せて10月1日来日し、記者会見までしました ( MSN産経ニュース 10.2/00:20 ) 。


 中国から沢山の食品を輸入している日本人としては、必読の書物です。

 本書の内容は、目次より、本の帯に書かれた次の文章を読むだけで見当がつきます。


          信じがたい事例のほんの一部

■ホルモン剤で促成した養殖水産品により 6歳の男児に髭が……

■イシビラメ、メバルから発癌性物質を検出

■合成染料 「 スーダン・レッド1号 」 で卵の黄身を鮮やかに

■喘息治療薬を添加してブタの赤身肉を殖やす

■ 「 頭部巨大化幼児 」 の原因は、粗悪な粉ミルク

■ "髪の毛"を分解したアミノ酸溶液で醤油をつくる……


 本書の中国語原書の表題は 『 民以何食為天 』 といいます。これは、清朝の乾隆帝の統治の核心をまとめた 「 国以民為本 」 「 民以食為天 」 という対句から来ています。

  「 国の基本は民 」 「 民の大事は食 」 という意味です。

 それに 「 何 」 をつけると、 「 民の大事はどんな食? 」 「 民は何を食べればいいのか? 」 という疑問形になります。

 著者は、 「 民以食為天、食以安為先 」 ( 民の大事は食、食は安全第一 ) だと言い ( 184頁 ) 、真相を暴くことによって人々に注意を促して事態を改善させようと考えています。独裁が続く限り、チェック・アンド・バランス効果は期待できそうにないのですけれども。


 真相を暴く著者が拘束もされず、外国へ出られるのは希望の種ではありますが。


 注目点を一つだけ紹介しておきます。日本でも報じられた 「 段ボール肉まん事件 」 は 「 やらせ 」 ではない、ということです ( 204頁以下 ) 。この事件は、中国では 「 紙包子 」 ( 紙饅頭 ) 事件と言われているそうですが、これが外国で大きく報道されたので、責任者の処罰が必要となった。それに、贋肉まんを取締ったら、高い本物しか店に並ばず、買えない庶民から恨まれる。身内の処罰と庶民の恨みを避ける円満な処理法が、 「 やらせ 」 ということで、記者一人を処罰して四方八方を丸くおさめるあの遣り方だった、というのです。

 著者は、肉まんの値段が、原料である饅頭+豚肉の値段からして 「 絶対あり得ない安さ 」 だと論証しています。本物の肉まんは、庶民の買えるものではないのです。

 かくて庶民は、段ボール入りと承知の上で、安い包子を食べ続けることになります。

 中国では、貧乏人は救われない!


 念のため一言。日本では餡や豚肉など 「 中身 」 が入ったものも 「 饅頭 」 ( まんじゅう ) と言いますが、中国語の 「 饅頭 」 ( まんとう ) は中身なし、小麦粉だけです。中身の入ったものは 「 包子 」 ( ぱおず ) といって 「 饅頭 」 とはっきり区別します。だから日本語では 「 段ボール肉まん 」 ですが、中国語では 「 紙包子 」 となる訳です。

 もう一言。 東京では 「 肉まん 」 ですが、関西では 「 豚まん 」 と言います。

( 平成19.10.4記 )