日本の前途を塞ぐ國際偏見の壁 - 伊原教授の読書室

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    日本の前途を塞ぐ國際偏見の壁




伊原註:これは『關西師友』八月號 16-17頁に掲載した「世界の話題」(284號) です。


        少し増補してあります。





      謀略と偏見が罷り通る世の中


  昔、台灣の大學教授と夕食のテーブルを圍んだとき、

  台灣側にきつーく叱られたことがあります。


  「台灣が易々(やすやす)と國民黨にしてやられたのは、日本が惡いんだ。

  「我々は日本時代の教育で嘘をつくな、正直たれと教はり、

  「それを忠實に實踐して來たから、嘘つきの國民黨に體(てい)よくやられてしまつた」


  台灣に正直を教へた日本も、今や、

      中國の“南京大虐殺" の嘘、

      韓國の“從軍慰安婦" の嘘

  に振り回されてゐます。


  破廉恥な嘘をしつこく繰返し


  資金と人材を集中的に投入して世論を惑はす國際謀略に備へないと、

  一國の生存が危ふくなるえらい時代です。


  何しろ二十世紀後半以降、「假想現實」virtual reality が罷り通り、

  素人には「眞」と「僞」の區別がとんとつかぬ世の中になりましたから。


  ブラック・ボックス氾濫時代なのです。


  由々しき大事は、

  日本が國防と外交をまかせてゐる米國までその“嘘" を信じ、

  それが“嘘" だと發言した安倍晉三首相を忌避し始めたやうなのです。


  米國では、“從軍慰安婦" を否定する安倍首相 (第一次安倍内閣時代) を、

  “虐げられた女性への同情を持たぬ卑劣漢" として

  唾棄の的になつてゐるらしい。


  首相の靖國神社參拝も、

  “日本の戰後體制打破(侵略容認の動き)"

  と考へたい向きがあり、

  中國がこの

  “ヤルタ・ポツダム體制"

  を日本に押附け續けるべく、歐米露を説得中です。


  これは、日本の内から見た風景と全く異ります。

  つまり、日本の實 (まこと) の姿が、

  中國や韓國が宣傳する出鱈目な像によつて

  霞ませられてゐるのであります。


  日本は戰後、占領體制(日本弱體化政策)を引きずつて來ました。


  その中でも、

  戰後育ちに戰前の書物を讀めなくする現代假名遣・略字・漢字制限は、

  語彙を激減して戰後知識人の頭を幼稚化した儘、現在に到つてゐます。

  讀書力が弱い若者は、大學に入つても、國語がまともに使へぬ状況で聽講します。


  このほか我國は新憲法初め、米國の占領政策の基本を未だひたすら墨守中です。


  戰後六十餘年經ち、そろそろこの邊で“普通の獨立國" に戻りかけたら、

  歐米中露がさうはさせじと身構へる氣配。


  三國干渉の再現、大變な國難です。

  でも國民に危機感なく、臥薪嘗胆の用意はなほさらない。

  これが危機でなくて、何が危機なのでせうか!



      戰前から續く國際謀略の陷穽


  日本の歴史を知り、

  「あの戰爭」(支那事變+大東亞戰爭)の經緯を調べて

  我國がいかに素晴らしい國であり、

  東アジアの安定勢力であつたかを承知してゐる私ですが、

  同時に我國が「謀略に弱い」ことも痛感します。

  相手を信じ過ぎるのです。


  「あの戰爭」には三つの契機があります。


  第一、白人の人種偏見。

  カリフォルニア州の日本人排斥運動と、日本人強制收容がその典型です。

  そして第一次世界大戰のパリ講和會議で日本が出した人種差別撤廢案が否決された上、

  米英の日本壓迫を加速しました。


  第二、米國發世界大不況後の英米の利己主義(ブロック經濟で日本を米英市場から締出す)が

  日本を滿洲・支那に向かはせた。

  米英は更に排日の支那と組んで日本を叩いた。


  第三、米國FDR民主黨政權は容共策を採り、

      ( FDR = Franklin Delano Roosevelt )

  ソ聯と組んで支那を支援して反共の日獨を叩いた。


  FDRの誤つた容共策は、ソ聯人民にまで“不必要な苦しみ" を長引かせました。


  誤つた觀念は、人々を必要以上に苦しめます。

  これば“高學歴時代" の一大欠陷です。


  嘗て世界大不況が世界を席捲した1930年代に、

  どれだけ多くの優秀な若者が共産主義にかぶれ、命を落としたことか!

  自分が傷つくばかりか、周圍の人々をどれだけ苦しめたことか!

  二十世紀はその苦惱と血で、黒く、また赤く染 (そま) つてゐます。


  戰後70年近く經つてそろそろ普通の國に戻りたい我國は、

  外國の根深い偏見にどう對處すべきか。


  戰後、唯々諾々と米國そのほかの“戰勝國" に從つて來た我國は、

  今や更なる生存が覺束ない處まで追い詰められてをります。


  理由は明確、歴史の解釋權を戰勝國に奪はれた儘にして來たからです。

  「勝てば官軍」とは、勝者の史觀がまかり通る事態を言ひます。

  これを覆さぬ限り、我國に出番はありません。

  我國は“獨立國" になれません。


  我國は明治開國以來、東アジアの安定勢力でした。


  また、第二次世界大戰後、我國が米國の同盟國としてどれだけ

  東アジア、更には世界の安定に貢獻して來たことか。


  中國と韓國は、その我國を破壞しようとしてゐるのです。

  この破壞は、我國の生存のためにも、世界の安定のためにも、

  斷固 阻止せねばなりませぬ。


  それには、「發信力」を鍛(きた)へねばなりませぬ。


  今頃こんなことを言ふのは泥縄 (つまり手遲れ) もいい所ですけれども、

  發信力を備へぬ限り、日本は滅びます、

  嘘つき勢力の仕掛けた罠に嵌(はま)つてむざむざやられて。


  我國の存在意義と世界貢獻を主張して來なかつた

  手抜きの過去の空白を、大急ぎで埋めませう。

  大和民族本來の「正しい歴史解釋」を取戻し、普及させませう。

(平成25.7.7/8.10補筆)