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「中國は經濟大國」の化けの皮
伊原註：これは『關西師友』平成25年 5月號 10～11頁に掲載した
「世界の話題」281號です。
少し増補してあります。
大幸運に惠まれて發展した中國
中共政權下の中國經濟は、毛澤東期と鄧小平期に二分できます。
毛澤東期は核武裝のためソ聯に飢餓輸出をして農民を最低四千五百萬人も餓死させ、
全國民が貧困に甘んじた時代、
鄧小平期は西側に搾取し放題の舞台を提供して
中共政權も外貨を稼ぎまくつた時代です。
香港と台灣の華人を先頭に、日本や歐米が資本・技術を注ぎ込み、
販賣までしてやつて、中國を世界の工場に仕立て上げました。
私曰く、「人の褌による經濟成長」です。
その實情を、體驗から周到に説き明かした一文があります。
小島衣料の小島正憲「アジアに『中國の奇跡』の再現はない」です。
この獨創的な一文を讀むためだけにでも、
これを掲載した『激動するアジアを往く～中國リスクの分散先を求めて～』
（櫻美林大學北東アジア綜合研究所、2013.3.15) 2000圓＋税
を買ふ値打があります。
小島さん曰く、
「中國の奇跡」は「ヒト・モノ・カネ」の偶然の集積によるものであつて、
中國に再現せず、他國にも出現することはない、と。
ヒト＝無權利の低賃金勞働者が無盡藏に存在した
大學出の幹部候補生も豐富
外國人指導者も豐富
→ 「ヒト」については後述します。
モノ＝製品は日歐米市場へ (中國は營業努力無用)
資材は日米歐から無償供與 (機械設備・部品原材料は外資が持込み)
建物は只同然の超安値 (國營企業の餘剰建物が剰つてゐた)
カネ＝進出外資が無償資金援助
土地の切賣り (外資進出で中共は「土地が賣れる」ことを發見した)
人民元の切下げも莫大な爲替差益を齎した
其他＝税制面での優遇政策
環境規制も緩やか
この見出しに對する御自分の體驗による説明が目から鱗の膝を打つ文章なのですが、
殘念乍（なが）ら、この短文では立ち入つて紹介する餘裕なし。
この後、
「アジア諸國にこの偶然の集積はない」
と題して
カンボヂア・ミャンマー・バングラデシュ 3ヶ國の實情を紹介してゐます。
寄つてたかつて人の住めぬ國に
資本主義とは金儲け競爭の制度化ですが、順調な發展には自制が不可欠です。
禁欲による秩序の確立です。
強慾 (がうよく) は混亂・無秩序・破壞を齎（もたら）します。
マックス・ウェーバーはこれを
「賤民資本主義」パーリア・カピターリスムス Paria Kapitalismus
と稱（よ）びました。
伊原註：パーリア＝印度の不可觸賤民
中國の「社會主義市場經濟」は、正にこの賤民資本主義です。
ついでに言ふと、
億單位のボーナスを平然と受取るウォール街の金融業者も
慾惚け「賤民」そのものです。
億といふ金錢單位は、自分や家族の生活に必要な金額を搖かに超えてゐますから。
強欲な賤民がのさばる中國は、
水も空氣も土壤も農藥や重金屬、放射能で汚染され、
人の住めぬ不毛地になり果てました。
今の中國を見てゐて、一昔前の、蔣家獨裁時代の台灣を聯想します。
台獨（台灣獨立）派が逮捕・投獄・拷問・死刑になる蔣經國末期の台灣の立法院で、
黨外（國民黨批判派）の立法委員が並居る閣僚を指さして
「お前らはみんな“台獨" だ！」
と叫び、立法院の空氣が凍りつきました。
「台獨」とは、「台灣で獨身生活を強ひられてゐる」といふ意味です。
つまり家族は居住權を持つ米國やカナダに住み、
自分はグリーンカード（外國の居住權證）を保有してゐて、
いつでも外國に逃げられる態勢を整へてゐる、と指摘したのです。
今の中國要人も同じ「逃げ出す」態勢にあります。
要人や金持ちが外國へ逃げる態勢にある國が、何で「世界の大國」であり得ませうか？
先の小島さん曰く、
我社が 1990年に湖北省に進出した時、百人の工員募集に千人が殺到して、
嬉しい悲鳴を上げたことをよく覺えてゐる、と。
採用後、彼らは豫想を搖かに超えて、晝夜を問はず勤勉に働き、忽ち技術を習得した。
本當にハングリー精神に富んだ若者たちで、工場は熱氣に溢れてゐた、と。
「その中國も、2003年以降、人手不足に陷つた」とも。
また、文革後再開された大學で猛勉した優秀な卒業生が工場幹部になつた。
我が工場にも優秀な大學出の若者が數多く入社して來て
工場幹部に不足することなど全く無かつた。
四十代の働き盛りだつた私も、
日夜、工場内で捩り鉢巻をして陣頭指揮し、
中國人幹部に多くの貴重なノウハウを全部無償で傳授した、と。
アジア諸國に、中國にあつた「偶然の集積」はない、と小島さんは斷言します。
そして曰く、
若し東南アジア諸國に好機があるとすれば、
「中國は世界の市場」の化けの皮がはがれた時、
世界經濟が大混亂に陷つてアジア諸國に超大型の偶然が到來する秋（とき）だと。
ですが、中國の“大混亂" は世界の大混亂、
特に中國の風下・海流到達先にある我國は、その混亂を無事乘越えられませうか？
（平成25.4.6／5.23補筆）