日本の再出發

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世界の話題(二八〇)




      日  本  の  再  出  發



伊原註:これは『關西師友』四月號 8-9頁に載せた「世界の話題」(280) です。


        ほんの少し、増補してあります。






      安倍政權が成すべき事


  民主黨の 3年間は、反體制派が政權を取るとどれだけ日本を壞せるかの實驗場でした。

  また敗戰後、米占領軍が扶植した日本惡者史觀と、

  それに乘じた反日日本人の合作による

  「戰後デモクラシー」

  の歸結でありました。


  民主黨政權のお蔭で、私達は「戰後體制」脱出の必要を痛感しました。


  ですから安倍政權は、

  敗戰後に獨立を恢復した筈の日本を「正しい路線」に乘せる任務を擔つてをります。


  では、正しい路線とは何ぞや?


  日本を「普通の國」にして、東アジアの安定勢力に戻すことです。


  何故わざわざ「普通の國」といふか?


  米國は日本占領期に、日本の周圍の諸國が“反日" になるよう手を打つたからです。

  その米國の意圖を察知して、日本は近隣諸國に“低姿勢" で臨んで來ました。

  韓國が李承晩ライン を敷き、竹島を占據しても文句を言はず、

  周邊諸國を支援しながら君臨せず、

  共産中國にも終始低姿勢で臨み、優待して來ました。


  ひたすら低姿勢で奉仕に勵んで來たのです。


  そして戰後半世紀以上も米國の保護國に甘んじて來ましたから、

  今やつと普通の國になるためには、

  手直しすべき箇所が澤山あります。


  やるべき作業の第一は、

  憲法を含み、占領下に制定された全法律を無效にすることです。

  但し「代替法制定までは、現行法を有效とする」といふ過渡的措置が要ります。


  憲法は、當分は不文憲法として、已に確立してゐる慣習に從つて運用します。

  憲法制定には時間がかかりますから。


  急務の一つが、米國の NSA に相當する國家安全保障部局といふ

  インテリヂェンス機關の設置と秘密保護法の制定です。


  自衛隊は國軍にします。

  これで軍が警察官僚に取仕切られる戰後の異常事態を正常化します。


  武器は戰鬪機を含めて自主開發し、友好諸國に賣りませう。

  ご存じの通り、我國の武器を買つた國は我國に敵對しませんので、

  武器輸出は安全保障に大いに貢獻します。



      東アジアの安定に貢獻


  我國は戰前から、東アジアの安定勢力でした。

  米國はそれを見誤り、

  あらうことか、「資本主義打倒」のコミンテルンと組み、

  東アジアの不安定要因であるシナと聯繫して日本を叩きました。


  以後、東アジアは不安定化した儘、現在に到ります。



  米國の日本叩きの誤りについては、早くから識者の指摘があります。


  スイスの外交官にして歴史學の教授でもある、カール・J・ブルクハルトが

  1925年に、英米の外交政策の失態を指摘して曰く、


  眞の危險はソ聯共産主義なのに、

  反共の獨日を叩くとは、

  アングロ・サクソン (英米) は何たる阿呆か と。

    (赤羽龍夫譯『諜報・工作  ラインハルト・ゲーレン回顧録』

    (讀賣新聞社、1973.3.5,980圓、14頁)


  米國はソ聯を支援して獨日と戰つた結果、

  戰後に東西冷戰で、ソ聯と直接對峙する羽目に陷りました。

  これだけで“相當の阿呆" です。


  米國の親中反日政策の誤りについては、

  米國の外交官マクマリーが切言してゐます。

    (ジョン・アントワープ・マクマリー原著

    (アーサー・ウォルドロン編著

      (北岡伸一監譯・衣川 宏譯

      (『平和はかいに失はれたか──大戰前の米中日關係  もう一つの選擇肢』

      (原書房、1997.7.28, 2800圓+税)


  その忠言を無視して、日本を中國から排除した結果、

  米國は日本が擔(にな)つてゐた東アジアの問題と責任を肩代りする羽目になつた

  と ヂョーヂ・F・ケナンが反省してゐます。

    (『アメリカ外交50年』岩波同時代ライブラリー、1991.1.14, 76頁, 83頁)


  米國は戰爭大好き國です。何度も自分の方から戰爭を仕掛けます。

    (米國を“戰爭狂ひ" といふ人もゐるほどです)


  それに米國は、自分が育てた國を後で叩く癖があります。

  ソ聯然り、イラク然り。

  だから日本は、米國の良き友として、愚行をやめよと忠告する必要があります。


  それには、餘程賢くなければなりません。

  國家安全保障部局 (インテリヂェンス) は、賢くあるために必要なのです。


  日本の近隣にも、愚行を繰返して恬として恥ぢない諸國があります。


  父金日成を殺して拉致・國家テロ・核武裝・食糧恐喝路線を採つた北朝鮮、

    (萩原遼『北朝鮮:金王朝の眞實』祥傳社新書、2012.3.10)

  日本を罵つて快哉を叫ぶ韓國、

  日本敵視策で人民の政權批判を逸(そ)らす中國、です。


  ある人はこれを、

    「日本の傍には小人小國と小人大國がある」

と表現しました。


  これら諸國とも、賢く附合ひませう。

  それには、内外の事情に精通してゐなければなりません。

  同時に、無法を跳ね返す反撃力を備へて置く必要があります。

  彼らに一目置かせるには、

    「棍棒片手に猫撫で聲で」

    (Speaking softly while holding a big stick)

  とセオドア・ローズヴェルトが言つた通り、實力が必須なのですから。

(平成25.3.2/4.26補筆)