「遠慮は無用、中華民國を廢止しては如何!」 - 伊原教授の読書室

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  「 遠慮は無用、中華民國を廢止しては如何! 」



伊原註:これは、7月9日附の台灣の 『 自由時報 』 投書欄に載つた投書です。

        馬英九總統を揶揄した一文です。


        作者 ( 大學教師 ) は 黄 炳榮

        中文の原題は、 「 別客氣, 把中華民國給廢了?! 」

          ( 自由廣場 『 自時 』 7.9,13面掲載 ) :





  私は思ふのだが、國民黨は きつぱり 中華民國を廢止したらよろしい。


  中華民國を廢止せぬ儘 五星紅旗を持つて保釣活動をすれば、

  山ほどの疑問に答へる必要が出て來るからであります。

  なぜ 青天白日滿地紅旗なる國旗を持たずに尖閣諸島に行つたのか?


  中華民國を廢止しないと、

  中國から小物が來ても この所謂國旗を何處にも立てさせぬやう、

  警察を取締やら没収やらのため、こき使はねばなりませぬ。


  面倒臭い話になるぢやありませんか。


  國民黨は、びびる必要はありませぬ。

  中華民國を捨て去つても、若者からの大反撥はありませぬから。


  最近、中高生・大學生・大學院修士院生向けに行はれた

  「 平和效果の研究 」 といふ意識調査を見ても、

  台灣の若者世代の 「 台灣 」 認同 identification 感が頗 ( すこぶ ) る強い反面、

  「 中華民國 」 なる言葉は今の台灣の若者の語彙には滅多に出て來ませぬ。


  だから馬先生よ、遠慮は御無用、裏に隱れて こそこそやる必要もありませぬ。

  正面切つて綺麗さつぱり、中華民國を廢止してはいかが!


  處で中華民國を廢止したあと、國號は どうすれば宜しいか?

  馬先生の 「 歴史定位 」 は天の與へた千載一遇の好機かも知れませんな。

  貴下の選擇の幅は甚 ( はなは ) だ大きいからであります。


  貴下は新國名として種々 ( いろいろ ) 選べます。例へば──

    「 終極統一共和國 」

    「 九二共識國 」 ( 1992年コンセンサス國 )

    「 一つの中國 」 から

    「 蔣經國 」 または

    「 講經國 」 まで

  どれでもお好きなものを誰に氣兼ねもせずに選べるのであります。


  もし統獨問題で融通を效かせるおつもりなら、

    「 台灣中國 」

と命名しても宜しい。

  貴下はその國父でありますよ、何たる愉快!


  國名は單なる名稱問題に過ぎませぬから、

    「 馬英九 」 でも

    「 馬小九 」 ( 伊原註:馬英九が飼つてゐる犬の名 ) でも宜しい。

  何なら、

    「 中華民國 」 の儘でも

    「 中華冥國 」 ( 伊原註:發音が似てゐる ) でも構ひませぬ。


  但し良心に照らして提案致しますが、

  二度と再び 五星紅旗 を 保釣 ( 伊原註:魚釣島保有運動 ) にお使ひになりませぬよう!


  貴下は、米中間で手練手管を弄する能力がご自分にあるとでもお考へかな?


  ハーヴァード大學御出身の賢い賢い御方 ( 伊原註:馬英九 ) さんよ、

  他人 ( ひと ) は皆阿呆だと思はんで欲しいですな。

  他人が皆阿呆なら、貴下に 「 無能 」 の レッテル が貼られたりする譯がないでせうが。


  釣魚臺 ( 魚釣島の台灣名 ) を玩具 ( おもちゃ ) にしていぢつてゐると、

  萬一不注意により發火でもして、

  日米安保條約が發動するやうな事態になれば、

  貴下は中國の兄貴に頼るほかなくなりますが、

  火遊びは、よくよく打算してかからぬと危險極りないですぞ!

( 平成24年 8月10日送稿 )