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平成24年元旦
新年おめでたうございます
伊原 吉之助
皆樣、希望の持てる新年を迎へられますやうに。
近況報告を兼ねた賀状です。
( 合同ゼミの課題通知を兼ねてゐるので、御不幸があつた方にも出します。
( また、戰後育ちに戰前の書物を讀めなくした占領政策の 「 日本の傳統斷絶陰謀 」 を跳返すため、
( 正字・歴史的假名遣ひにします。
( 正字の端正さと歴史的假名遣の格調の高さを味はひ、讀慣れて下さい )
昨年は、天變地異の酷い年でした。
今年は、經濟危機が火を噴きさうです。
〈外國旅行〉
台 灣 ( 11月2日〜11日 ) :
一年ぶりの台灣行の目的は、三つありました。
( 1 ) 『 台灣の政治改革年表・覺書 ( 2011.9.-10. ) 』 の印刷・配布です。
但し 「 台灣年表 」 の方は作りかけのもの。
9月, 10月は 21世紀日亞協會の報告 「 中國現代史を問ひ直す 」 の準備に掛りつきりでしたから、
上記の後半に この レジュメ ( 第一部 34頁/第二部 18頁 ) をつけて配布しました。
( 2 ) 台灣の日本語學生への講義。
台灣の知友には大學教授が多いので、私が訪台すると、
日文科の學生相手の講義を設定してくれます。
今回は、たまたま學期試験とぶつかつたので、
講義したのは台中の靜宜大學 3年生相手に一回きりでしたが、
熱心に聽いて貰ひ、質問も鋭いものでした。
或る學生の質問は、私が觸れた個人主義と利己主義の異同についてのものでした。
そこで、 「 全と個 」 「 公と私 」 の差について話しました。
個は全との緊張關係の中での存在だから、全への配慮なしに個は存在し得ぬこと、
私は公を害するものだから、抑へる必要があるもの、と。
質問した學生は諒解するところがあつたやうで、散會後、挨拶に來てくれました。
( 3 ) 台灣の知友から台灣の實情と問題點を聽くこと。
これは能率よく進み、収穫多大でした。
來年 1月に行われる總統選の状況
( 現職中國國民黨主席馬英九・野黨候補蔡英文・國民黨と對決姿勢を強める
( 親民黨主席宋楚瑜の三巴 )
がよく判りました。
11月 5日にお目にかかつた時は元氣に話してをられた台灣獨立建國聯盟主席黄昭堂さんが、
歸國後の11月17日に急逝されたのは、實に意外でした。
黄昭堂さんはこの直後、雜務處理のため訪日し、11月 9日には東京で宗像隆幸さんと會つてゐます。
17日午前、台北の病院で鼻の手術をし、麻醉から醒めぬうちに持病の心臟の大動脈剥離で永眠。
享年 80歳 ( 1932.9.21 台南縣七股郷下山仔寮漁村に誕生 )
墓名=台灣那想那利斯徒 ( 台灣ナショナリスト ) 黄昭堂之墓
遺族は息子 ( 正澄・正憲・正嘉 ) 、娘 ( 淳子・コ子・亞希子 ) 、孫 ( 悠人・麻衣子・礼子 ) と、
皆、日本名です。
黄昭堂さんは、台灣本土派中、 「 餘人を以て換へ難い大人物 」 でした。
合 掌
( 4 ) 民進黨の 「 子豚育成活動 」
財政基盤のない野黨の民主進歩黨が、 「 子豚貯金箱 」 零細獻金運動で活性化した状況を
目の當りにしたことは、貴重な經驗でした。
子豚育成運動の發端をなした台中の蔡英文・蘇嘉全競選本部で子豚貯金箱を三つ ( 三色 ) 、
貰つて來ました。いい記念になります。
「 子豚育成運動 」 については、 『 關西師友 』 新年號掲載の 「 世界の話題 」 に書きました。
( 5 ) 來年一月の總統選は、從來豫想されてゐたやうな 「 現職馬英九當選 」 ではなく、
馬英九・蔡英文・宋楚瑜の三巴となり、
蔡英文が當選して台灣に初の女性總統出現の可能性が出て來ました。
面白くなりさうなので、一月に再び台灣に總統選・立法委員選の視察に行きます。
〈文章關係〉
1 ) 『 關西師友 』 世界の話題: 「 蔣經國の掌中で踊る民進黨 」 ( 新年號 ) ,
「 和魂の活性化 」 ( 2月號 ) , 「 歩け、歩け 」 ( 3月號 ) , 「 天下大亂の兆し 」 ( 4月號 ) ,
「 關東大震災の轍を踏むな 」 ( 5月號 ) , 「 江青の謎 二つ 」 ( 6月號 ) ,
「 ニヒリズム と 觀念論の慘禍 」 ( 7月號 ) , 「 昭和10年代の日米共榮の道 」 ( 8月號 ) ,
「 帝國海軍の罪と戰後の無責任の横行 」 ( 9月號 ) , 「 辛亥革命百年 」 ( 10月號 ) ,
「 江澤民を巡る權力鬪爭 」 ( 11月號 ) , 「 文化大革命再論 」 ( 12月號 ) ,
「 台灣總統選と子豚貯金箱 」 ( 新年號 )
2 ) 蔓延する經綸皆無の政治家 ( 年頭に想ふ 『 國民新聞 』 第19161號/平成23年 1月31日,3面 )
3 ) 諸君の志を問ふ ( 河合榮治郎生誕 120周年記念集會 2.15 ( 火 ) での配布文/現代學生への メッセージ )
4 ) その後の馬英九政權 ( 『 日本 』 4月號,72-77頁 )
5 ) 『 台灣の政治改革年表・覺書 ( 2011.9月-10月 ) 』 ( 台灣で 50部刊行・配布 )
( 21世紀日亞協會の報告 「 中國現代史を問ひ直す 」 レジュメ 48頁 が 主題です )
6 ) 「 中國近代化の難題:帝國と國民國家の交錯 」
( ひょうご講座 『 中國近代化の基本問題 』 櫻美林大學出版部、近刊の一章 )
〈口頭發表〉
1 ) 1月12日 21世紀日亞協會第170回例會 ( 大阪 ) : 「 台灣の現状と日中台 ( 米 ) 關係 」
2 ) 1月21日 蘆屋讀書會 ( 津村宅 ) : 「 尖閣問題:米國・台灣との四角關係 」
3 ) 3月26日 伊原ゼミ三碓會 ( 和歌山 ) :
講話I 「 江戸の天下泰平と今後の世界──日本を救ふ人・稲田朋美 」
講話II 「 天譴:關東大震災と東日本大震災 」
4 ) 5月26日 NHK BSプレミアム で放映した
四回シリーズの 辛亥革命百周年記念番組 「 近代中國に君臨した女たち 」 の
第四篇 「 江青 マダム毛澤東の孤獨と慾望 」 に 出演
( 録畫したのは 4月29日, 東京 澁谷 の NHKホール に於て )
共演者=進藤晶子 ( 司會 ) 、夏木マリ ( 俳優 ) 、楊逸 ( 芥川賞今年度受賞者 ) 。
5 ) 9月18日 國際文化研究會 ( 芦屋 ) : 「 日本の生きる道 」
6 ) 9月28日 21世紀日亞協會第178回例會 ( 大阪 ) :
「 中國現代史を問ひ直す ( 1 ) :國民國家形成壓力と中華帝國の反應 」
7 ) 10月11日 神戸社會人大學 「 中國近代化の基本問題 」 講座第六回 ( 神戸・縣民會館 ) :
「 中國近代化の難題:帝國と國民國家の交錯 」
8 ) 10月31日 21世紀日亞協會第178回例會 ( 大阪 ) :
「 中國現代史を問ひ直す ( 2 ) :共産化壓力とと中華帝國の共産化 」
9 ) 11月9日 台灣:靜宜大學日文科3年生に講義 ( 台中市 ) : 「 311震災後の日本の状況 」
10 ) 12月13日 日亞協會第181回例會 ( 大阪 ) :
「 現地視察に基く台灣總統選前夜の状況 」 ( 3理事の報告の一番目 )
11 ) 12月26日 EAS研究會 ( 京都 ) : 「 辛亥革命百周年 」
12 ) 1月20日 蘆屋讀書會 ( 津村宅 ) : 「 元首交代の先陣を切つた台灣 」
13 ) 1月31日 日亞協會第182回例會 ( 大阪梅田 ) : 「 總統選後の台灣はどうなるか 」
14 ) 2月4日 第23回日本と台灣を考へる集ひ ( 大阪難波 ) : 「 台灣總統選の總括 」
第12回 「 伊原ゼミ三碓會 」 ( 伊原擴大ゼミ勉強會/自由參加 ) 豫告
聯絡先:田川クルミ ( TEL 06-6706-3322/携帶 080-1440-5728/kurumisan@docomo.ne.jp )
平成24年3月25日 ( 日 ) 箕面 ( みのお山莊 「 風の杜 」 一泊 )
562-0001 大阪府箕面市箕面 2-14-71/TEL 072-722-2191 Fax:072-722-2426
參加費:食事と勉強會/二次會/宿泊 の各費用は未確定。別途お知らせします。
勉強會 の テーマ: 「 現代史上の深刻な茶番劇二つ:ロシヤ革命・日米戰爭 」
觀念 ( 思ひ込み ) が時代を動かし、人を大量殺戮する冷酷無慘さ!
以下は、このテーマへの導入のための參考資料です。
( 1 ) 社會主義幻想も日本叩き幻想も ロシヤ革命幻想の悲慘な效果に過ぎない。
「 觀念の禍 」 恐るべし!
19世紀の ナロードニキ → リィェーニン の 共産主義 → 革命幻想の蔓延
→ 1991年のソ聯解體後は 「 改革ニヒリズム 」 に 變相して相變らず惡影響の猛威をふるひつつあり
cf. 上島武・村岡剛編 『 レーニン:革命ロシヤ の 光 と 影 』 ( 社會評論社、2005.6.30 ) 3200圓+税
ロシヤ十月革命史=ボリシェヴィキ史觀に基く勝者の史觀。我々はそれに騙されて來た!
23頁:赤軍が種子まで没収 ( 革命の擔い手都市勞働者を養ふため )
→ 故に、多くの地方で畑は播種されず。情け容赦なき収奪 → 農民が大量饑死
ツァーリ體制の最惡時でさへ、共産主義ソヴェト ロシヤ で行はれたやうな無茶苦茶な狼藉はなかつた。
28頁:1921-22 に 500萬人超の餓死者を出した大飢饉=ボリシェヴィキ農業・農民政策の必然的産物
この飢饉の原因=リィェーニン の 政策上の過ち ( 大躍進時の毛澤東の前例 )
31頁:民衆を 「 見震ひ 」 さすため多數の クラーク ( 篤農家 ) の公開絞首刑を指令した リィェーニン
大飢饉中、農民から容赦なく都市プロレタリアート用の食糧を取立て、農民を餓死に追ひやつた リィェーニン
32頁:NEP ( 新經濟政策 ) モスクワ などの大都市で經濟恢復・繁榮が殊更強調されてきたが、その背後に、飢 饉の中で厳しい徴税に喘ぐ無數の農民の犧牲が隠されてゐる。
cf. フランク・ディケーター ( 中川治子譯 ) 『 毛澤東の大飢饉:死者4500萬人 』 ( 草思社、2011.8.5 ) 2800圓+税
→讀んで溜息をつくしかない惨状! この惨状を齎したのは、毛澤東の權力の腐敗です。
彼が若き日に體得した主意主義 「 精神一到、何事か成らざらん 」 のごり押しです。
( 2 ) 米國の日本叩きのあほらしさ!:
米國は何度も、育てた相手を後で叩く愚行を繰返してゐます。
第二次大戰でソ聯を支援し、冷戰で叩く、
同じく第二次大戰で 「 中華民國 」 と蔣介石を支援し、見放す ( これで中共を力附けた )
イラン−イラク戰爭でイラクを育て、後で叩き、サッダーム・フセインを殺す etc.
アフガニスタン戰爭でソ聯を叩くためタリバンを育て、あとで叩く
cf. ラインハルト・ゲーレン ( 赤羽龍夫監譯 ) 『 諜報・工作:ラインハルト・ゲーレン回顧録 』
( 讀賣新聞社、1973.3.5 ) 980圓
著者序 の 中に長く引用された カール J.ブルクハルト ( スイス の 外交官/歴史學教授 ) の 書簡の一節に曰く、
ブルクハルト は 「 眞の危險 」 は ナツィス・ドイツ ではなく、ソ聯共産主義だと指摘し、かう書く──
ドイツ と 日本 は ロシヤ の 擴張に對する天性の敵對者だ。
ところが 西側、つまり ロシヤ共産主義の擴張によって最も脅威を受ける筈の
英帝國と米合衆國は ( 馬鹿なことに ) 獨日を弱めるため全力を擧げてゐる。
日英條約の ( ワシントン會議に於る ) 廢棄は、私からすれば、
全く二次的な北米の權益に對する極めて近視眼的且つ不吉な屈服に見える。
序に言はせて貰へば、ロシヤ に關する限り、日本は ドイツ より 遙かに確實な要素だ。
ドイツ では フランス に對抗して結ばれた古い同盟の記憶、
例へば フリートリヒ二世の幾つかの戰爭の思ひ出がまだ生殘つてゐる。
全ての状況が ( ソ聯共産主義の登場によつて ) 變つたことを認識するのは難しい。
國内的な心醉や情熱を全て外交の分野に投影したがるのは、民主國の特徴だが、
これは兎角 實に恐るべき害惡を惹起し易いものなのだ。
cf. 西尾幹二 『 GHQ 焚書圖書開封5:ハワイ・滿洲・支那の排日 』
( コ間書店、2011.7.31 ) 1800圓+税
西尾幹二 『 GHQ 焚書圖書開封6:日米開戰前夜 』
( コ間書店、2011.11.30 ) 1800圓+税
この二册は、日米戰爭 ( 米國の日本潰し ) について考へたい人にとつて、必讀文獻です。
cf. 渡邊惣樹 『 日米衝突の根源 1858-1908 』 ( 草思社、2011.10.25 ) 3500圓+税
571頁に太平洋岸 ワシントン州 コロンビア河口北岸にある コロンビア砲台の寫真あり、
日本に向け 日露戰爭初期の1904年に築造されました。
この時から米國は日本と戰ふ用意をしてゐたのです。
なぜなら、1898年の米西戰爭で フィリピン に 進出してゐたからです。
因みに、ウッドハウス暎子 『 辛亥革命と G.E.モリソン:日中對決への道 』
( 東洋經濟新報社、2010.10.21 ) 2200圓+税 ( 2頁 )
によると、
1901.1.1 英國自治領になつた濠洲は、安全保障を英國に頼つたため、
日露戰爭を契機に 「 假想敵 」 が ロシヤ から 日本に變り、
英國と共に米國にも頼る反日國になつたさうです。
かういふ大環境の中で、日本は大東亞戰爭に追込まれて行きました。
西尾幹二曰く、日本人は敗戰後ずつと、なぜ我々は對米戰爭をするといふ間違ひを
しでかしたのかと問ふて來たが、それは間違ひで、
なぜ米國は日本を壓迫し日本と戰ふやうな無法なことをやつたのか、をこそ
問はねばならぬ、と ( 『 GHQ 焚書圖書開封5:ハワイ・滿洲・支那の排日 』 「 はじめに 」 參照 ) 。
以上、大量の人 ( 特に知識人 ) の頭に浸透し、大量の人々に苦難や慘死を強ひた
“觀念" の破壞力の恐ろしさを、今回の伊原ゼミ三碓會では問題にします。