「 民族壓迫體制 」 -伊原教授の読書室

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蔡丁貴 ( 公投護台灣聯盟 總召集人 ) の投書



      「 民 族 壓 迫 體 制 」

                    ( 自由廣場 『 自由時報 』 1.20,15面 ) :


伊原註:上記の投書題目を意譯すると──


  台灣で中國國民黨が蔣家獨裁時代に決めた

「 18%優遇利息のぼつたくり體制は台灣人壓迫體制だ 」


投書者 蔡丁貴が責任者を務める團體の名稱を日本人に判りやすく言ふと、

  「 國民投票で台灣を護る聯盟 」 です。



( 1 ) 軍・公・教 人員の退職金に18% の優遇利息をつける 「 設計 」 によつて

  「 優遇 」 を受けた者の大多數は、

  その昔 中國黨と一緒に台灣に逃げて來た少數の族群 ( 伊原註:外省人 ) だ。

  軍人・公務員・教員の子女に對する教育補助も同じだし、

  軍人の水道代電氣代優遇、

  軍人・教員 ( 小中高校教員・軍人が退職 轉職 ) の免税、

  退役軍人は毎月 1萬3500元を受領、

     ( 台灣人は 金門島の二二八砲撃戰に參加しても この受領はなかつた ) 、

  退役軍人の醫療費無料、

  退職後引續き仕事した場合、滿65歳以前は二重に給與が貰へた 等々、


  こんな明々白々の不公平・不正義が横行してゐた。

  それなのに台灣人は文句も言はず、じつと耐へてきた。

  どれほどの期間?  六十幾年もだ!


  中國黨が政權を取ると かうなるのだ ( 最近、もつと多くを貪らうとしてゐる ) 。


  民進黨の執政は 中國黨より少しマシだつただけ。

  その理由 ( わけ ) は、台灣人でこの吸血體制に吸込まれたのは一部少數だけだつたからだ。



( 2 ) これは民族壓迫體制の設計にほかならない。こう理解して初めて、

  こんな度厚かましい制度が公然化しても中國黨が全然改める氣配がない理由が判る。


  では民進黨の反撥意志は なぜかくも弱々しいのか?

  それは、彼らがこの對立を 「 貧富の階級 」 の對立を造り出すとしか考へないからだ。


  では民進黨と違つて

  なぜ人民の反對の聲がかくも大きいのかといふと、

  台灣民族の共同の經濟利益が自づと自覺されてきたからである。

  これは 「 中華民族 」 が 「 台灣民族 」 を 壓迫する經濟搾取體制の特殊設計なのだ。

  少數の台灣人 ( 不幸なことに その大部分は有能な知識分子である ) が

  この體制の 甘い汁のおこぼれに與 ( あづか ) り、

  擔つてゐる筈の社會的責任を放棄してゐる。

  台灣獨立建國の效能は 毎度のことながら 力不足であつて、

  台灣人は自分の運命をきちんと檢討してゐないのだ。



( 3 ) インド の 聖人 ガンディー曰く、

  「 英國政府のインド殖民地統治が酷かつたのではない。

  「 インド人が 英國政府の殖民地統治を 指を銜へて眺めてゐただけなのだ 」


  これに引換へ 台灣では、

  中國黨の屑連中は 台灣で 結構な暮しを六十幾年も續けて來たのだ。

  台灣人たるもの、しつかり自己批判する必要がある。


  台灣の知識人は 一般の台灣人より遙かに深刻に自己反省せねばならぬ。


  考へ過ぎるには及ばぬが、

  自分の人生の價値が何處に在つたかを振返つて考へて見て欲しい。



( 4 ) この流亡政府體制 ( 伊原註:中華民國體制 ) を打倒して初めて、

  もつと公正で正義ある、

  もつと民主的な體制を打立てられ、

  壓迫を受け續けて來た台灣人が 一人前になれるのだ。




伊原註: 「 18%問題 」 については、少し解説が要ります。

        要點を列擧してをきます。


        ( 1 ) 軍・公・教 分野 ( 三つ共 公務員 ) は外省人が壓倒的に多い ( 多かつた ) 分野です。

        ( 2 ) 給料が安く、 住居・食糧切符などの現物給與がされました。

        ( 3 ) 大學教授も、掛持ちで働く人が普通だつた。

        ( 4 ) 1961年から、退職金 ( 限度あり ) に 21.6% の高利が支給されるやうになつた。

        ( 5 ) 1983年から、現行の 18% が適用されている。これは行政命令といふ臨時措置による。

        ( 6 ) その後この高金利は 1995年6月までの勤務に對する退職金に限られるやうになつた。

        ( 7 ) それでも毎年 700億元〜800億元といふ巨額がこれに投ぜられてゐる。

        ( 8 ) 國民黨は共産黨同樣、 「 以黨治國 」 だから、黨役職勤務が公務員勤務同樣に算定される。

        ( 9 ) この高利配當が年金と相俟つて、

            「 退職後の支給額が現職時の給與を上回る 」 場合が少なくない。

            公務員退職者の多くが 「 支給額は現役時代以上で毎日が日曜日 」 を謳歌してゐる。

            陳水扁二期目の國民黨による 「 赤シャツ隊 」 の坐込みをしたのは、

            これら裕福な退職公務員であつた。

            また、この優遇措置の廢止を恐れる彼らが有力な國民黨の支持基盤となつてゐる。

        ( 10 ) 昨年 7月、國民黨壓倒的多數の立法院で 「 暫定措置 」 を 「 恒久措置 」 に改める方案が通り、

            今年 1月から實施された。そこで 「 反對運動 」 も盛り上がつて來た。

        ( 11 ) この措置は、高級取りを優遇する 「 不公正 」 「 不公平 」 な再分配である。