菅直人の日韓併合首相談話の僞善

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  菅直人の日韓併合首相談話の僞善




伊原註:2010. 8.10  菅直人首相は日韓併合百年に際して 「 首相談話 」 を發表しました。

        それに對し、 『 月刊日本 』 10月號で、元東大教授の酒井信彦さんが鋭い批判をしてをられます。

        そこで、先づ 「 首相談話 」 を全文讀んで頂きます。


        次に、酒井さんの批判を要約して紹介します。


        最後に、私の短いコメントをつけます。



  日韓併合百年/首相談話發表/ 「 アジア の 安定展望 」 ( 『 産經 』 8.11,1面 ) :

  菅直人首相は 10日、首相官邸で記者會見し、 29日に控へた日韓併合百年に當り首相談話を發表した。


        伊原註:明治43/1910.8.22  日韓併合條約  調印

                            8.29  公布・施行




  首相談話 全文 ( 『 産經 』 8.11,5面 ) :


( 1 ) 本年は 日韓關係にとつて大きな節目の年です。

  ちやうど百年前の 8., 日韓併合條約が締結され、以後36年に及ぶ殖民地支配が始りました。

  三・一獨立運動などの激しい抵抗にも示された通り、政治的軍事的背景の下、當時の韓國の人々は、

  その意に反して行はれた殖民地支配によつて國と文化を奪はれ、民族の誇りを深く傷付けられました。


( 2 ) 私は、歴史に對して誠實に向き合ひたいと思ひます。

  歴史の事實を直視する勇氣と それを受止める謙虚さを持ち、

  自らの過ちを省みることに率直でありたく思ひます。

  痛みを與へた側は忘れ易く、與へられた側は容易に忘れられないものです。

  この殖民地支配が齎した多大の損害と苦痛に對し、

  ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの氣持を表明致します。


( 3 ) このやうな認識の下、これからの百年を見据ゑ、未來志向の日韓關係を構築します。

  またこれまで行つてきた所謂在サハリン韓國人支援、

  朝鮮半島出身者の遺骨返還支援といつた人道的協力を今後とも誠實に實施して行きます。

  更に日本が統治してゐた期間に朝鮮總督府を經由して齎され、

  日本政府が保管してゐる朝鮮王朝儀軌等の朝鮮半島由來の貴重な圖書について

  韓國の人々の期待に應へて近くこれらをお渡ししたいと思ひます。


( 4 ) 日韓は 二千年来の活溌な文化交流や人の往來を通じ、

  世界に誇る素晴しい文化と傳統を深く共有してゐます。

  更に今日の兩國の交流は極めて重層的且つ廣範多岐に亙り、

  兩國の國民が互ひに抱く親近感と友情は曾てないほど強くなつてをります。

  また 兩國の經濟關係や 人的交流の規模は國交正常化以來飛躍的に擴大し、

  互ひに切磋琢磨しながら その結付きは 極めて強固なものとなつてゐます。


( 5 ) 日韓兩國は 今この 21世紀に於て 民主主義や 自由・市場經濟といつた價値を共有する

  最も重要で緊密な隣國同士となつてゐます。

  それは 二國間關係に留まらず、將來の東アジア共同體の構築をも念頭に置いた

  この地域の平和と安定、世界經濟の成長と發展、

  そして 核軍縮や気候變動・貧困や平和構築といった地球規模の課題まで、

  幅廣く地域と世界の平和と繁榮のために協力して リーダーシップ を 發揮する パートナー の 關係です。


( 6 ) 私は この大きな歴史の節目に 日韓兩國の絆がより深く、より固いものとなることを

  強く希求するとともに、兩國間の未來を開くため不斷の努力を惜しまない決意を表明致します。






    酒 井 信 彦 ( 元東京大學史料編纂所教授 )


  「 シナ の チベット併合を直視せよ 」

                    ( 『 月刊日本 』 平成22.10月號,4〜5頁 )  


( 1 ) 政治的軍事的な力によつて殖民地支配をされ、

  國と文化を奪はれ民族の誇りを深く傷つけられたと言ふのなら、

  それは チベット の 運命に ものの見事に當嵌る。


  韓國や 日本の一部の人間は 日韓併合條約は力で押付けられたものだから違法だと主張するが、

  それなら、それは チベット を 併合した 1951年の 17條協定と全く同じである。


( 2 ) 日本による韓國併合と 中共による チベット併合の相違點。

  第一に、時期が違ふ。

  日本の韓國併合は 1910年。中共の チベット併合は1951年。

    この 41年の間に 世界史は 2度大きく變つた。


    帝國主義時代 → I大戰後の民族自決時期 ( 但し歐洲のみ ) → II大戰後の殖民地獨立時期


  日本の韓國併合は I大戰前の帝國主義時期。

  中共の チベット併合 は II大戰後の 殖民地獨立時期。


  第二に、併合後の結果に大きな差がある。

  日本の朝鮮統治は 35年で終る。つまり、過ぎ去つたことである。


          伊原註:しかも、日本統治の成果が大きい。

                  日本は、韓國と滿洲では投資の持出しで 「 回収 」 出來てゐない。

                  兩班の無能統治下で見捨てられ飢ゑてゐた庶民がちやんと喰へるやうになつた。

                  インフラストラクチュアも整備された。

                  禿山が緑の樹木で覆はれた。

                  ( 朝鮮戰爭で再び禿山になつたが )


  中共の チベット統治は 60年經過してなほ 續行中である。


  日本の朝鮮統治は過去の話、

  中共のチベット支配は紛れもない現實。


  第三に、過去と現實のどちらが大事かと言へば、現實が大事に決つてゐる。

  然るに、菅直人首相に代表される日本人は、日本の過去を大仰に反省しながら、

  チベットの深刻極まる現實には目を瞑 ( つぶ ) る。

  曾てドイツのワイツゼッカー大統領曰く、

  「 現在に盲目なものは、過去にも目を閉ざしてゐる 」


  菅直人一派の日本人が日本の朝鮮統治の過去を本氣で反省してゐるのなら、

  チベット の 現實に黙つてゐられる筈がない。




  →伊原コメント:

    酒井さんは、菅直人らが

    「 日本の過去を反省してゐる 」

    のではなく、

    「 外國人の日本批判を利用して日本を貶めてゐる 」

    に過ぎないことを暴ゐたのです。

( 平成22年9月25日 )