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  曹 長青


  「 中美交手對台灣的三點啓示 」

          ( 自由廣場 『 自由時報 』 8.2,15面 )




  南シナ海での領有權爭ひを巡つて、中米兩國がまた衝突した。

  米國國務長官ヒラリー が 最近、ASEAN會議で


  South China Sea/南シナ海海域の安定と安全は米國の 「 國益 」 だと表明。

  China/シナの外交部長が稀に見る激烈さで米國務長官談話を譴責した。


  中米兩國は 「 喧嘩 」 状態にあるが、台灣にとつては啓示である。

  啓示は三つある。


  第一に オバマ政權が どれほどシナに好意を示し、時には諂ふことまでしても、

  北京政權は專制體質を變へず、

  經濟・軍事の崛起に連れて對外擴張に及び、國際常識を踏み躙つてゐる。


  オバマ は 就任後、極力シナとの友好に努めた。

  とりわけ初訪中時の講演では 「 人權 」 を持出さず、

  米中共同聲明で初めて米國は

      「 シナの主權と領土の完全整備を尊重する 」

  と言つた。


  輿論に批判されると、

  米政權は僅かに チベット に 觸れたものの、

  台灣にも南シナ海にも言及することなく、

  北京に幻想する餘地を與へた。


  アメリカ の シンクタンク米國企業研究所 American Enterprise Institute/AEI の 學者

  Daniel Blumenthal が 最近 論文を書いて曰く、

  オバマ の 傾中は 北京に 米國與し易しと誤解させ、シナを對外擴張に向かはせた と。


  今日、馬政權は 北京に對して宥和策と見紛ふばかりの妥協政策を實行してゐるが、

  中米の最近の衝突状況から見て、

  北京にいくら善意を發揮してもシナの專制體制は變らず、

  對台武力行使を含めて對外擴張を控へることなど有り得ないと判る。


  第二に、シナの軍事擴張を米國が坐視することなど有り得ない。

  今回の爭ひの焦點は 南シナ海の主權である。

  南シナ海の面積は台灣百個分に相當する。

  しかも石油・鑛産物・漁業のみならず、

  世界の船舶の 1/3 が 通る シーレーン の 要所を扼してゐる。


  W.ポスト の 最近の報道では、

  5ヶ国 ( シナ・ヴェトナム・フィリピン・マレーシア・台灣 ) が 領有權を爭つてゐる上、

  米國がこの爭ひに注目してゐる。

  つまり 「 5ヶ國 6方 」 が關る問題なのだ。


  90年代の初めに、それぞれが 「 主權を棚上げして共同開發する 」 宣言に調印した。

  だが事實は各個開發であつて、島嶼の一部を占領した。


  そして オバマ就任後の妥協政策が北京に幻想を與へた。


  だから 今年 3月米國國務次官 スタインバーグが

  WH の アジア事務主任 貝徳 と 北京を訪問した時、

  シナ側は 初めて公然と 南シナ海は シナ領土完全整備の 「 核心的利益 」 に關ると表明した。

  米國の專門家曰く、

      これは、南シナ海が チベット・台灣と同じ扱ひだと宣言したに等しい と。


  北京の擴張政策に對して、米國はかなり警戒してゐる。

  米國の國防長官・國務次官ら多くの官員が これについて談話を發表し、

  南シナ海の安定と航行の自由を擁護すると強調した。

  ヒラリーは 今回、更に米國の National Interest 「 國益だ 」 と斷言した。


  終つたばかりの、空母が參加した米韓合同軍事演習も、

  實力を示して中國の擴張的戰略意圖を阻止する試みだ。

  基本的に無人の南海島嶼に對し、米國は行動で以て北京の擴張を阻止する構へである。


  そして 2300萬人を擁する民主主義の台灣に對しては、

  中國の對台武力行使など、米國はなほのこと、坐視すまい。


  第三に、一對一でなく、多數國の參加でシナの獨覇を封ずる。

  ASEAN會議で多數國が 「 多國間協議 」 を 提案して シナのいふ 「 一對一 」 談判を退けた。

  何しろ經濟でも軍事力でも格差が大きいシナと 「 一對一 」 では

  小國は どうしようもないから である。


  「 多國間協議 」 なら米國が加はるから、

  「 ASEAN+米國 」 vs.シナ  といふ構図にでき、

  南シナ海問題を多邊化・國際化できるからだ。

  これをシナは警戒し、嫌がつてゐる。


  W.St.Journal が 先週水曜日 ( 6.30 ) の 社説で曰く、

  「 米國が參加して初めて ASEAN は 充分な自信を以て北京に對抗でき、

  「 國際法に遵ふよう要求できるのだ 」


  ASEAN諸国は シナの主張する 「 二國間協議 」 ( 實は各個撃破 ) に對抗するには

  「 多國間協議 」 しかないことを理解した。


  所が馬英九政權は 北京との 「 二國間協議 」 に熱を上げ、ECFA に 調印した上、

    「 永遠に米國に對して台灣の爲に出兵を求めたりはしない 」

  と誓つてしまつた。


  ASEAN諸國は米國と手を組んで北京の擴張政策・壓迫に對抗しようとしてゐるのに、

  馬政權は米國から離れて北京に近づくといふ、流れに反する道を取つてゐる。


  馬英九の懐刀・金溥聰が最近、馬英九は賣台に非ずと辯解したが、

  それなら馬政權の流れに逆らふ傾中行動は、どう解釋すれば良いのか?

( 平成22年8月15日 )