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張旭成 「 美中爲台灣打不一樣的戰爭? 」
──從卜睿哲的新書談
( 張旭成=陳水扁前政權の國家安全會議秘書長 )
( 「 米中は台灣のために類例なき戰爭を戰ふか? 」 )
( 『 玉山周報 』 No53/6.17〜23, 14-15頁 )
伊原註: 『 玉山周報 』 は、前副總統の呂秀蓮が創刊し、自ら董事長 ( 理事長 ) をやつてゐる週刊誌です。
台灣を巡る國際問題を中心に論評してゐます。
中國の軍擴・台灣併呑策が進む中、米中關係を重視する米國が 「 台灣から手を引くのか 」 、それとも 「 台灣は斷じて守るのか 」 が怪しくなつてゐる折から、米國で長らく大學教授をしてゐた張旭成の評論を掲載します。
米國の支援を信じてゐる點は 「 甘い 」 と思ひますが。
( 伊原註、終り )
北京は正に台灣に 「 類例なき戰爭 」 ( A War Like No Other/不一樣的戰爭 ) 、
つまり 胡錦濤が主導する 「 戰はずして人の兵を屈する 」 ( 孫子 ) 終極統一を目指す政治戰爭を
仕掛けてゐる。
だが米國は、誰が WH ( White House ) に入らうと、
米國の核心的利益と價値を堅持し、台灣と協力して台灣を防衛する。
ワシントン の シンクタンク 「 ブルッキングス研究所 」 の 國際問題專門家二人、即ち
米國在台協會 AIT 理事長を務めた卜睿哲 Richard C.Bush と
國家の安全保障を研究する歐漢龍博士 Michael E.O'Hanlon が
2007年に
A War Like No Other:The Truth About China's Challenge to America
( 『 類例なき戰爭:シナの對米挑戰の眞實 』 )
といふ著作を出版した。
今年 6.11, 「 五南文化事業機構 」 が その中文版を出した ( 林宗獻博士譯 ) 。
そして その出版記念座談會で著者 2人と 台灣の學者が討議した。
米國の態度に苛立つ中國
1 ) 1995-1996 に 李登輝總統の 「 現實外交 」 と 訪米 及び 台灣總統直選が
中國の 「 文攻武嚇 」 による ミサイル發射威嚇と中國の台灣對岸である華東・華南に於る大規模軍事演習を惹起し、更に 中共武力犯台を予防するため 米國による 2個空母戰鬪群の台灣海峽派遣を生んだ。
二つの大國が 1950-53年の朝鮮戰爭以來の軍事的睨合ひをやつたのである。
ここ十數年間に 米國・英國・インド で 何十册もの米中戰爭論や その防止論が 出たが、
本書はその中の白眉である。
2 ) 21世紀に 中國は崛起し 強國となり、
列強の地位・政策及び國際システム の 制度・企劃に挑戰するに到つた。
アジア では この挑戰は 米國・日本・インド に向ふ。
2人の著者は この挑戰は長期繼續するとし、
その焦點である この地域で 米中が衝突するのは 台灣問題についてだ といふ。
3 ) 學者の中には米中戰爭不可避論を唱へる者がゐるが、
中華人民共和國建國以來の 60年間に、朝鮮半島を除き、米中は未だ台灣で衝突したことなし。
50年代に米國第七艦隊が台灣海峽を 「 中立化 」 し、
中華民國政府と相互防衛條約を調印して
毛澤東の台灣解放・統一といふ中國の目標に反對の意志を表明した。
1958.8. 中共軍は大擧して金門島を砲撃し、
アイゼンハワー政權は核使用で威嚇したため
中共軍は手控へ、二度と限界に挑まうとはしなかつた。
1979. 米中が國交を結び、國民黨政權と斷交したが、
その後 米國議會で 「 台灣關係法 」 が通過し、引續き台灣に武器と防衛の傘を提供し續けた。
かくて北京は、 「 平和統一 」 の悲願が實現できてゐない。
4 ) 強調するに足りるのは、米國の立場は確固たるものであり、
明確に台灣防衛の決意を表明してゐることである。
北京は 口を極めて罵るものの、行動は慎重であり、米國との正面衝突は避けてゐる。
米國の公式態度は 「 曖昧戰略 」 strategic ambiguity であるが、
その意圖は、北京の對台武力行使の阻止である。
情勢を見誤つた北京は屈服した
1 ) 1996.春、米中が一旦戰爭寸前まで行つた原因は
1995.夏、人民解放軍の台灣北部への ミサイル試射が
民間航空機及び船舶の ルート變更を生んだにも拘らず
國務省と國家安全會議が 「 曖昧戰略 」 の所為で反應鈍く、
中共軍を 必要以上に大膽にさせたため である。
中共軍幹部は ソマリア・ボスニア での米軍の弱腰を見て強氣になつた。
米軍の對抗相手である熊光楷は 米國の退職中國通 フリーマン に曰く、
「 君らは 1950年代に核使用で中國を脅した時のやうな影響力を失つたのだよ。
「 君らが我々を攻撃すれば、我々は反撃するぞ 」
熊光楷は 更に核攻撃で米國を恫喝した。
「 君らは台北のことより、ロサンゼルス が核攻撃される心配をするがいい 」
2 ) 同年 3.7, 解放軍は 基隆と高雄の外海に一連の ミサイル試射をやつた上、
華南沿海部で大規模軍事演習まで實施した。
國務省と國家安全會議の對處が弱かつたため、
國防長官 ペリー が台灣海峽危機に對處することになつた。
3.9, ペリー は ペンタゴン で 國務長官・CIA長官・各軍種の參謀長を集めて危機處理會議を開き、
2組の空母戰鬪群を台灣水域に派遣することを決めた。
3.10, クリントン大統領は これを批准して翌日この重大決定を發表し、
米國が 張子の虎でないこと を示した。
このとき ペンタゴン は 必要に應じて解放軍と戰火を交へることまで討議決定してゐた由である。
3 ) 米國の迅速果斷な反應は、状況を讀違へてゐた北京の指導者に處置する餘裕を殆ど與へなかつた。
彼らは、中國軍の能力では米軍に對抗できぬことを知つて直ちに 「 退却 」 を決め、
米軍に 人民解放軍は 「 單純な 」 軍事演習を行つただけだ と通知して、矛を収めた。
解放軍の將領は 「 大恥をかいた 」 と臍を噛んだ。
かくて彼らは毎年二桁増の軍事豫算を組み、解放軍の近代化を圖る。
彼らの目標は 米國の台灣海峽軍事介入を撃破することである。
米中食違ひの要因は幾らでも轉つてゐる
1 ) 台灣の民主化と 2000年の政權平和移行は 曾て米國から高い稱讃を得た。
ブッシュ大統領は就任後の 2001.4.,
米國は 「 できる限り 台灣の自衛を支援する 」 と述べ、對台武器賣却を發表した。
これは北京にとり 巨大な挑戰であつた。
ブッシュ の海峽兩岸政策は 平和と現状の安定を維持することであつた。
即ち、一方で中國の武力犯台にも武力恫喝にも反對する。
他方、台灣が北京を刺戟するやうな言論や國民投票・改憲で台獨を法制化することにも反對する。
ワシントンが最も配慮するのは、台灣が過度に主權を強調したり、台獨の法制化を進めたりして
兩岸の衝突を招き、イラク に忙殺される米國を米中戰爭に捲込む事態である。
阿扁の執政期間に 北京も 巧妙な對米外交宣傳を行ひ、
米國に 台灣は 「 トラブルメーカー 」 だ と決め付けさせ、
台灣海峽情勢の發展を共同管理するやう 米國を誘導した。
2 ) 台灣の政變と ブッシュ の台灣友好政策に對處するため、
北京は引續き ミサイルを増強して台灣を威嚇する軍備を強化すると共に、
2005.3. 「 國家分裂法 」 を通過して國家分裂を防ぎ、對台軍事作戰を法制化・合理化した。
米國は兩岸戰爭の發生を防ぎ、捲添を食はぬやうに、
兩岸問題への介入と外交努力とを 一段と強化した。
3 ) 2008.5., 馬英九總統が就任したあと、極力兩岸關係を強化し、
三通を全面的に開放し、經濟貿易協力を擴大して、
外交でも 「 休戰 」 を提唱して二度と主權を強調せず、北京に大幅讓歩した。
但し、解放軍は引續き武力を増強中であり、 ミサイル も増強中、
そして米國の對台武器賣却に強く反對してゐる。
實は北京は台獨を口實に軍備を擴張してゐるだけなのだ。
アジア に 君臨しようとしてゐるばかりか、他日 超級大國になつて米國と肩を並べたいのである。
リチャード・ブッシュ と マイケル・オハンロン は 他の米國アジア專門家同樣、台灣問題を米中關係で過大評價してゐる。
實は、米中の意見が食違ひ、利益が衝突するのは台灣問題に限らない。
台灣がなくても、米中關係は 北朝鮮・イラン の 核武裝・核エネルギー競爭・氣候變動
その他 諸々の グローバル な 諸問題の影響を受けるのである。
4 ) メディア の取材に答へた ブッシュ の言論が 米國の兩岸政策を理解するのに役立つ。
ブッシュ 曰く、多くの台灣人が反對してゐるが、米國は兩岸の ECFA調印に樂觀的である。
だつて 「 兩岸の協力が殖えれば衝突が減つて米國の利益に符合するからだ 」 と。
北京は その核心的利益は兩岸の統一だと言ひ、米國の對台武器賣却に反對する。
だが ブッシュ がいふ米國の核心的利益の中に 對台武器賣却と共同防衛を含んでゐるのだ。
ブッシュ は こうも言ふ、台灣の體制と台灣人の自主性も尊重すると。
從つて 2012.に 誰が當選しようと、米國は引續き台灣と協力して行くのである。
終極統一を台灣は判つてゐるのか
1 ) 特筆すべきは、北京が正に台灣に 「 類例なき戰爭 」 を仕掛けてゐる、といふことだ。
それは 米國の專門家がよくやるような
ミサイル・飛行機による攻撃、
水陸兩用戰車による上陸、
台灣封鎖などの作戰
とは異なり、
胡錦濤が主導するのは──
「 戰はずして人の兵を屈する 」 政治戰爭
である。
台灣内で徴募・吸収・培養した 「 代理人 」 を使ひ、兩岸の 「 終極統一 」 を促すのである。
米國の軍事介入を防ぐため、北京の策略は
政治協商・平和談義・和平協定により
國民黨の親中派指導者を通じて兩岸の和平統一を達成するのである。
血は流さない。
「 台灣關係法 」 は空文と化し、米國は 「 武力介入 」 の餘地が無くなる。
2 ) 2012.は 鍵を握る年である。
同年秋、中共は 「 18全大會 」 を開催して胡錦濤が總書記を辭任する。
彼は 時に 頗る焦りを感じてゐるに違ひない。
北京は馬英九の 「 三不 」 ( 獨立せず、統一せず、武力行使せず ) 政策に強烈な不滿を抱いてゐて、
談判促進・統一促進したくて ウヅウヅ 苛々してゐるのだ。
台灣人民は 自らを救ひたければ、
2012.3.の 總統選で 投票用紙を使つて馬英九を辭めさせて彼に胡錦濤と内外呼應できなくさせ、
北京の 「 類例なき戰爭 」 を敗北に追ひやらねばならない。
オバマ大統領が 2012.11.に再選されるか否かに拘らず、
また共和党候補が WH に 入るか否かに拘らず、
米國聯邦議會は その核心的利益と價値を 堅持し、台灣と共同防衛するのである。
米國には 兩岸の衝突に干與する斷固たる理由がある。
リチャード・ブッシュ は 強調して曰く、
「 米國が平和と安全の擁護者であることに對する全世界の信頼がかかつてゐるからだ 」 と。