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李筱峰 「 台灣獨立建國的五個障礙 」
( 自由廣場 『 自由時報 』 3.14, 15面 )
伊原註:これは、台灣の新聞 『 自由時報 』 に掲載された、台獨派の論客の評論文です。
李筱峰=國立台北教育大學台灣文化研究所教授。
下記の譯書があります。
( 酒井亨譯 ) 『 台灣 クロスロード 』 ( 日中出版、1993.11.20 ) 1900圓
今年3月の台獨聯盟創立40周年を紀念した評論です。
今頃見つけて譯した、譯したてのほやほやです。
ご參考までに──
世界中で最も多くの博士・教授を擁する革命團體 「 台灣獨立建國聯盟 」 が 1970年に海外で創立して40年。
台獨聯盟は、中國國民黨政權にとつて、眼中の釘のやうな存在の革命團體である。
90年代に ( 李登輝總統の民主化政策により ) 台灣に本部を移し、合法的社會運動團體になつた。
その間に台灣は民主化したのに、
民主化した台灣は、とつくの昔 ( 1949年 ) に 亡びた中華民國の脱け殻を身に纏ひ續けてゐる。
だから 台灣は、 「 事實獨立 」 ( de facto の獨立 ) 状態にありながら、
未だに 「 法理獨立 」 ( 國際法上の獨立 ) を達成できてゐない。
一體、台灣獨立の障礙はどこに在るのか?
私が認める台灣獨立建國の障礙は、以下の五つである。
第一の障礙 外來の中國國民黨
長期間、台灣の政治を掌握してきた中國國民黨は、
國共内戰に敗れて中國から流れて來た統治集團が主體をなす。
彼らが抱く國家の觀念は、中國に根差す 「 大一統 」 觀であつて、
近代國家の 「 國民主權 」 觀念に乏しい。
「 中華民族 」 の 政治的思ひ込みに染まり、血縁・種族・國家概念を混ぜくたしてゐて、
台灣を主體とする國家認同 ( 認同=identity ) の障礙をなしてゐる。
第二の障礙 奴隷根性の台灣民衆
中國國民黨の連中は、中國を座標に据えて 「 台灣消去 」 の教育・制約を刷込んだ無數の奴隷根性の人民を育てた。
彼らは今なほ、 「 台灣は下賤、中國は貴重 」 といふ奴隷根性を改めてゐない。
世界でこれほど奴隷根性を持つ人民は存在しない。
彼らは、自國が獨立自主の國家になるのが心配なのだ。
まるで、奴隷状態に慣れて、奴隷を解放した リンカーン 嫌つた黒人奴隷みたい。
纏足廢止を説いた秋瑾を痛く恨んだ纏足女性みたい。
まるで、大事なものを去勢したことを幸いと喜ぶ最後の宦官みたい。
第三の障礙 利益しか考へない商賣人だらけ
利益しか考へぬ一部の企業主や中國に投資する台灣商人 ( 台商 ) は、
台灣の長期的展望も全體思考も持たぬから、
中共の對台 「 以商逼政 」 ( 台商を取り込んで台灣政府を動かす ) といふ統一戰線策に
忽ち引きずり込まれてしまふ。
第四の障礙 緑陣營中の投機腐敗子
十幾年來、緑陣營内部に何人もの變節した投機的政客が出現した。
許某・施某・朱某・沈某・葉某・錢林……等々、或ひは、茜とか文とかいふ連中だ。
伊原註:許信良・施明徳・朱高正・沈富雄・陳文茜 ( 女 ) らです。
彼らは獨立建國の聲が天地を動轉させた頃に人民の期待を背にして登場し、
暫く好きなだけ活躍した後、身を翻して有權者に背いて去つた。
この種の政治變色は有權者の信頼を踏みにじり、失望落膽させる。
有權者は騙されたと悟つたあと、獨立派に對する信頼をなくし、獨立派は皆投機分子だと思ひ込む。
また、緑陣營中に若干の汚職腐敗案件が發生したが、同樣に民心が流失した。
この汚職腐敗をしつかり反省檢討して置かないと、獨立建國にとつて大きな障礙となる。
第五の障礙 獨立派中の絶對主義者
台獨の論述は、本來多元的多面的であつてよいのに、
少し論述が違ふと忽ち相手を攻撃する偏狹さが付き纏つてなかなか協力できない。
また、獨立建國問題で言葉に拘る人が居る。
よくある話だが、獨立派人士の中に、 「 台灣語 」 が使へるかどうかを踏み繪にする者が居る。
だが、阮銘・林保華・金恆〈火韋〉・曹長青らは 「 台灣語 」 を解さないが、
誰もが決然と台獨を支持してゐる。
王曉波の如き台灣人は流暢な 「 台灣語 」 を操る癖に、台灣獨立を敵視する。
將來、獨立建國する時に單一言語に拘れば、
他の語族の獨立建國參加を排斥するに等しい事態だから、
それでは台獨が成功することなど到底望めない。
以上の五つの障礙が克服できれば、獨立建國は俄然、有望となる。
人あつて曰く、
台灣獨立? 國際社會が認めるもんか。
いや、中國が壓力をかけて來る。これぞ台獨の障礙なのだと。
私が答へて曰く、
自ら國家を造らうとしない者を國際社會が支持する譯がない。
中國の壓力といふが、台灣はとつくの昔に中華人民共和國の外側で獨立を維持して來た。
中國との關係では獨立問題は存在せず、外侮に對處する問題あるのみ。
およそ世上に、自ら 「 敵國を内政化 」 して國家の安全が守れた例はない。
誰ぞ、そんな國家の前例を見つけて來てくれたら、私の給與を全額、その人に進呈しますよ。
( 平成22年5月6日 )