SAKAI Toru 「 台韓は平和的政權交代に失敗 」

> コラム > 伊原吉之助教授の読書室


SAKAI Toru

      「 台韓は平和的政權交代に失敗 」



伊原註:これは ネット で 9.14 に流れた文章ですが、下記新刊に同趣旨が展開されてゐます。

  頗る參考になる好著なので、是非お讀みになりますやうに──


     酒井 亨

       『 加速する 「 脱・中國經濟 」  取り残された日本の行方──逃げ出す台灣、そして世界 』

                  ( 晋遊舎、2009.9.20 )   720圓+税




  台灣も韓國も 平和的政權交代の システム づくり と 民主主義確立に完全に失敗した!

  大統領經驗者の身の安全が保證されず、平和的政權交代ではない。

  而もをかしなことに、韓國では全斗煥と盧泰愚がのうのうと生きてゐる一方、


  盧武鉉は殺され、金大中も死んだ。


  台灣の陳水扁が 「 汚職 」 罪でろくな物證もなしに無期懲役判決とは!

  殆ど ナイジェリア や コンゴ・キンシャサ の クーデター並の事態。

  政權が代つて前任者を 「 汚職 」 で訴追し封殺するのは、後進國の常套手段である。

  事實、判決文は中國古典からの引用が多く、文學的・情緒的に流れて、物的證據の指摘皆無といふお粗末さ。


  因に戒嚴令時代の台灣、今の中國・北朝鮮では 「 汚職 」 は死刑に値する重罪であることから判るやうに、 「 汚職で重罰 」 はまともな法治國の發想ではない。

  戒嚴令時代の台灣では汚職は死刑なのに、最大の汚職犯=蒋介石は見逃され、專ら政敵抹殺の道具に墮してゐた。


  元首經驗者を逮捕・侮辱する行爲は、政治安定を破壞する。

  假令相手が ルイ16世と マリーアントワネット、ニコライ 2世、フセイン大統領の如き專制君主であつても、世界史的には行過ぎと判定される。

  フランス革命・ロシヤ革命の王殺しは世界史の汚點だし、フセイン處刑によつて世界に反米感情が擴つた。

  米國は昭和天皇を免罪したくせに フセイン を處刑し、盧武鉉や陳水扁を許さなかつた。

  陳水扁や盧武鉉は フセイン に並ぶほどの暴君なのか?

  どう見ても、人權促進などの功績の方が多かつたと思ふが。


  因に陳水扁について 「 一家の素行に問題あり 」 との情報操作が行はれ、台灣人の多くもそれに洗腦された。

  これは フランス革命後、マリーアントワネットが過剰に 「 贅澤だ 」 と フレームアップ された 狂氣に似てゐる。

  抑 「 一家の素行 」 は道徳問題であつても、法的問題にはならない。

  道義問題も民進黨支持層への道義的責任であつて、中國國民黨とは何の關係もない。

  國民黨政權下の司法が陳水扁を法的に斷罪し、無期懲役などと判決を下すのは、フランス革命の 「 舊體制抹殺 」 の狂氣に等しい。

  だから 台灣は もはや 救はれないと思ふ。


  それにしてもおかしいのは、曾て米軍が駐留してゐた際に米軍地位協定で台灣の司法が信頼できぬからと台灣側の關與を一切排除してきた米國が、そして同じ内容の協定を韓國に對して未だに維持してゐる米國政府と歐米メディアが、どうして陳水扁と盧武鉉については台韓の司法の 「 正當性 」 を信ずるのか?

  歐米のダブルスタンタードは今更始つたものではないが、この邊り、米國の言ふことを聽かなかつた陳水扁と盧武鉉を フセイン のやうに抹殺しようといふ米國の意圖を感じさせる。


  結論=台灣と韓國は、これで民主化に完全に失敗した。

  兩國はもはや民主國ではない。

  アジア でまともな民主國は日本だけ、といふのが、悲しい現實かも知れない。