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伊原註:以下は 『 関西師友 』 平成21年8月號掲載の 「 世界の話題 」 236號です。
適宜補足してあります。
英 靈 の 傳 言
極樂を實現した戰後日本
20歳までに戰死する運命と覺悟を決めてゐた私が、滿15歳で敗戰を迎へ、戰後を生延びて早や64年。
今年私は傘壽。つまり、數へ年で80歳です。
來し方行く末を考へる年頃になりました。
英米を相手に大戰爭をやり、敗戰の憂目に遭つた日本は、復興から高度經濟成長を達成して一億總中産階層、世界一安全で貧富の格差が殆どない共存共榮社會を實現しました。
( ゴルバチョフ大統領が訪日した際に、 「 これぞ私が目指して來た理想の共産主義社會! 」 と感激して涙を流したという話を傳え聞いてゐます )
世界中の物が溢れ、誰もが不足のない生活をし、襲はれる心配もなく安心して過ごせる極樂みたいな國!
こんな國は世界で日本だけです。
歐米は、斷へず自己主張をしてゐないと無視され蹴落される嚴しい競爭社會です。
警戒心なしには暮らせない。
日本は違ふ、本音をさらけ出しても身の不安を感ぜずに生きて行けます。
しかし日本はその代償に氣付かず、今や破綻に直面してゐます。
食糧自給率四割、供給基地の中國農業が壞滅に瀕しており、中國に代る對日食糧供給國なし──といふだけでも危機の深刻さが判ります。
( 註 ) 高橋五郎 『 農民も土も水も悲惨な中國農業 』 ( 朝日新書、2009.2.28 ) 参照。
中國農業の悲惨さを描いた本と思ひきや、その中國農業に頼る日本に前途はない、と。
日本はもつと質素に暮らさねばならぬようです。
日本が極樂を作れた理由は三つあります。
立地條件の良さ、
國民をまとめて來た皇室の存在、
立派な傳統ある國を築いてきた先人達の奮闘努力。
私達は、この土地この國に生れたことを感謝し、良き傳統を築いた先人に感謝し、子孫のため奮闘努力せねばなりません。
家々に神棚・佛壇がありませうか。
皇室を尊んでゐるでせうか。
英靈を追慕してゐませうか。
後代を思つて奮闘中でせうか。
自分のことにかまけて奉仕を忘れてゐませんか。
利己主義蔓延る戰後日本
高度成長後の日本國民は、便利快適に狎れて邪魔臭がりになり、殆どを他人に依存する弱者になり下がりました。
その典型が都會人です。
他からの干渉を嫌がり、 「 隣は何をする人ぞ 」 で過ごす。徹底した孤立分散です。
生活の基本を全面的に他人に頼りながら、それを當前と心得、 「 自立 」 してゐるつもりで居る。
今の都會人は、食衣住行を自前でやれない。
停電したり水道が止まつたりすれば忽ちお手上げです。
かくもひ弱になつた根源:
國家を忘れ社會公共を忘れて個人が分散孤立し、自分の快樂追求に溺れたからです。
しんどいことは人任せ、自分は恩惠だけ受ける。
かくて極樂を實現した日本は、その實、崩壞と亡國への道を突進して來たのです。
中でも致命的なのは人物の小粒化、とりわけ指導者の小者化です。
江戸時代、各藩は國家經營のため人材育成を怠らず、藩校で文武兩道の教育をして後繼者を養成しました。
「 文武兩道 」 が大事です。戰ふ用意と實力がないと、指導者は務まりません。
しかし明治以降、參謀・官僚・專門家教育はしても、指導者教育は帝國大學でも陸軍大學校・海軍大學校でもしませんでした。
だから時代が下ると、人物は卑小化する一方です。
更に戰後、日本は國家の二大任務である國防と教育を疎かにしました。
國防は米國に任せて政治家は誰も祖國防衛について考へず、自衛隊は自衛さへも出來ぬ儘、放置されて來ました。
教育は日教組といふ反日團體に丸投げし、文部省の教科書檢定も日教組御用達で作つて來たので、反日教師が反日日本人を大量生産してゐます。
英靈の傳言に應へよう!
亡國を避けるには、内憂外患を退けねばなりません。
内憂の第一は、國家樞要の地位に浸透した 「 反日日本人 」 を一掃することです。
日本には、日本を壞したい人が一杯居て、樞要の地位に潜り込んでゐます。
こういふニヒリストを抱えた儘では、まともな世の中は作れません。
そして大臣高官など責任ある地位に居る人は必ず靖國神社に參拜すること。
外國へ行くと、その國の忠靈廟に花輪を捧げるくせに、自國の英靈には參拜しないといふ歪みを正しませう。
そして、公務員の忠誠宣誓が不可欠です。
國歌を歌はず、國旗に敬意を拂はぬ教員は教壇に立つ資格なし。
そして國防と教育を國民の手に取戻すこと。
とりわけ、防衛省と自衛隊を警察官僚から解放して 「 國軍 」 にすること。
外患とは、人權無視で重武裝に突つ走る大陸帝國 ( ランドパワー ) シナの海洋制覇壓力に屈せぬだけの實力を備へることであります。
國家は、基本を正せば立ち直ります。
民主國も獨裁國も、少數の優れた指導者が大多數の國民を導いて國家を運營します。
まづ、立派な指導者を發掘推戴してその指導を受け、國防と教育を立直しませう。
日本の前途を信じてあの戰爭に殉じた英靈が、日本國の彌榮の維持を私達に期待してゐます。
( 09.7.1/8.7補筆 )