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伊原註:7.13付で掲載した雲程署名の投稿によく似た論旨の投稿を發見しました。
何れも、野黨系の立場からの政府與黨批判です。
ご參考までに、これも掲載します。
頼怡忠 「 美日聯手 『 防 』 台? 」
「 日米共同で台灣を 『 守つてくれる 』 のだらうか? 」
( 自由廣場 『 自由時報 』 7.4,19面 )
頼怡忠=台灣智庫執行委員・前民主進歩黨中國事務部主任
( 1 ) 近頃、メディアは日米に與那國島駐兵の意圖ありと報道し、中國の軍擴や島民の要請を受けての對應と解説してゐる。
だがよく考へてみると、日米が台灣の今後の戰略に疑惑を持つたからではないか。
つまり、中國に向けた駐兵ではなく、台灣に向けた駐兵ではないのか。
( 2 ) 與那國島の位置は緯度では花蓮に近く、天氣の良い日は花蓮が見える。
島民は休日には花蓮に買物に來るし、花蓮で學ぶ子女も居る。
つまり花蓮に最も近い日本領土が與那國島なのだ。
與那國島は花蓮の防護壁があるので中國に直面することはなく、フィリピンからも遠い。
その與那國島に日米が駐兵する意味は、二つしかない。
( 3 ) 第一、日米が台灣海峽で衝突が生ずる見込みが高いと見てゐて、開戰後に中國が台灣東岸に進出する懸念が大きいため、花蓮の東側にある與那國島の部署を強化する必要があつた。
この意味は深刻である。
馬政權は、兩岸關係は緊張が緩み、台灣海峽情勢が平穏化したといふが、日米はこれを信用してゐない。
だからこそ、花蓮の外海に積極的に駐兵して萬一に備へたのである。
( 4 ) 第二、日米は、馬政權が台灣に出現して以來、戰略が根本的に變つたと見てゐる。
そこで日米は、將來中國と衝突する時に台灣は中國側に立つことを豫測して、それに備へた。
事實昨年、馬政權は尖閣諸島問題が發生した時、對日戰爭發動を口にしたし、中國國民黨の 「 聯中制日 」 ( 中國と結んで日本を抑へる ) の叫びを取締らずに放置した。
國家安全會議に到つては、制空權・制海權を放棄して消極防禦で行かうとさへ主張した。
最近、日本の駐台代表との接觸を制限する動きまで出てゐる。
これらが日本に馬政權の戰略的動向を疑はせ、米國の戰略部門も台灣の フィンランド化を懸念するに到つた。
かくて 「 日米同盟 」 は、台灣を盟友と見做せなくなつたのだ。
台灣が相手と協力し、花蓮が防護壁の役割を果せなくなれば、與那國島が最前線となるほか、台灣の動向まで監視せねばならなくなるのである。
( 5 ) 日米の與那國島駐兵を別にしても、日米が台灣の前途を懸念し台灣を監視せねばならぬ事態は、馬政權の宣傳とは大違ひの實情を示す。
今年の年末に、日本は防衛政策大綱を公布することになつてゐる。
また來年は日米軍事同盟締結50周年を迎へることから、その時期には日米の意圖が更に明かになる筈だ。
米國が P3-C對潜精密測定設備を台灣で組立てる約束を中止したことから判るやうに、台北は既に戰略上の不確定要素となつてゐるのである。
馬政權の 「 親中・遠米・反日 」 政策操作の下で、台灣は日米と協力できる友邦から、防禦對象へと一變した。
日米の與那國島駐兵は、この變化を告げる第一歩なのだ!
( 平成21年7月18日 )