2009. 7. 5 雲程 「 台海欠安 美日駐軍與那國 」 ( 自由廣場 『 自時 』 7.6,13面 ) :

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伊原註:先に載せた曹長青の評論と同じ投書欄に、下記の論評が載つてゐました。

     なかなか味のある分析です。

     ご参考までに。





2009. 7. 5 雲程 「 台海欠安 美日駐軍與那國 」 ( 自由廣場 『 自時 』 7.6,13面 ) :

  ( 台灣海峽の安全保障に空白ができたため、米日が與那國島に軍隊を派遣する )


作者= 『 放眼國際:領土地位變遷與台灣 』 の 著者。

全文は以下を見よ。http://tw.myblog.yahoo.com/hoon-ting/




( 1 ) 米日が與那國島に軍隊を駐留させる ( 米空軍は既に下地島に配備濟 ) 。

  これに對して、台灣内部に 「 防中 」 「 防台 」 といふ 2つの見方がある。


  前者は傳統的包圍思考からのもの。

  後者は台灣が中國の一部になることを見越したもの。

  どちらも妥當な見方だ。


  だが米軍が與那國島に配備するのは アパッチ攻撃ヘリ なのは驚きだ。

  これは制空權のための配備ではなく、台灣が制空權を喪失したあと、本島防禦戰と爾後の在台米人の保護撤退のための手配だ。


  從つて、上記米日兩國軍の與那國島配備は、台灣海峽の安全向上には繋らない。

  逆に危機の深化を示すものである。


( 2 ) 國際關係上、一方が卑屈になつて相手の期待を高めると 戰端を誘發する例が尠くない。

  西歐各國が カイザー・ヴィルヘルムII世や ナツィス・ドイツ に讓歩した前例を見よ。


  從つて馬政權のとめどなき親中拒日は 長期的に見て、台灣海峽の安全を高めるものではない。

  だから、馬英九が中共國務院の稱讃を受けるやうな行動をした後、米國が積極的に軍事配備に踏切つたのだ。


( 3 ) 國際關係の階層の正しい理解は頗る大事である。

  戰後、西側は米英が 「 根幹 」 ( 第一層 ) 。

  獨日は その左右の 「 兩腕 」 ( 第二層 ) 。

  獨日が動いた近隣地域が ( 第三層 ) 。


  階層毎に 60年の權力圖柄が積重つてをり、台灣と韓國は第三層に入る。

  はつきり言へば、韓國は ( 在韓米軍を加へて ) 中日兩國に對する重要據點の働きをする。

  台灣の重要性は韓國の後に續く。


  小國の立場は自分で選擇できず、日韓と雖もそれを免れぬといふのが殘酷な事實である。

  況して地位未定の台灣に於ておや。


( 4 ) 台灣は 米國に從屬するか、中國に從屬するか、の何れかしかない。

  これが免れ難い現實である。

  何れに落着くかは 米國が 「 米日安保聯盟 」 「 米中天然パートナーシップ 」 の 何れを優先するかに依る。

  これはまた、第二層に於て、それぞれ 「 獨−佛 」 「 日−中 」 の對峙状況と密接に關連してゐる。


( 5 ) 台灣の將來はどうなるか?

  台灣人が焦慮するほか、日本人も皆氣にしてゐる。


  敗戰國獨日は 多くの米軍基地を抱へ込み、戰勝國米英の兩拳となつた。

  米國が二次に亙る世界大戰の盟主であつたから、こうなつた。

  米國がこの地位を放棄すれば、國際關係は 19世紀の主軸なき時代に逆戻りし、戰端が何時何處で開かれるか判らぬ状態になる。

  從つて、米國の變化は精々、超大国 ( 全面掌握 ) から、共同の主體 ( 全世界の協力主體 ) へと變質したにとどまる。

  その典型的移轉の出發點は、下記の二つである。

  北大西洋條約 North Atlantic Treaty ( 1949.4.4署名/1949.8.24 發效 )

  米日安保條約 Security Treaty between Japan and the United States of America

    ( 1951.9.8 署名/1952.4.28 發效 )


( 6 ) およそ 二國間の友好關係の基礎は 最善の場合、文化・經濟・軍事の三面で完全な連携を要する。

  過去60年間、台灣と米國はこの状態にあつた。

  假に文化・經濟と軍事の間に齟齬があればどうなるか?


  馬政權は俄かに 「 識正書簡 」 ( 正漢字を知つた上で簡體字で書く ) や 「 ECFA 」 ( 中台版自由貿易協定 ) のやうな文化面・經濟面での對中急傾斜をやり、その一方で台灣海峽中間線は讓らずに維持しようとした。


  そこで上層の米日中の敵味方の區別が亂れ、不測の事態を生むことになる。


  中國國台辧 ( 國務院台灣事務辧公室 ) 主任王毅が馬英九出國のどさくさ紛れに、二提案をした。

  「 台灣海峽中間線の開放 」

  「 軍事互信機制の構築 」 構想


  この提案は、過去一年間の馬英九の 「 急速和解 」 「 文化面・經濟面の行違ひ 」 の産物である。


  この次には、必ずや米日上層構造が動くに違ひない!