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伊原註:以下は、中國人の民主活動家で台灣事情に詳しい曹長青が、台灣育ちの國際法學者・小田滋の見解を紹介した文章です。昨年、馬英九中國國民黨政權を選んで 「 方向 」 を見失った台灣の進むべき道を的確に指示しているので、紹介します。
曹長青
台灣は、中華民國及び中國國民黨から 「 獨立 」 せよ
曹長青 「 從中華民國和國民黨 『 獨立 』 出來 」 ( 星期專論 『 自由時報 』 2.8, 4面 ) :
この標題は別に奇矯な言辭を弄した譯ではなく、ハーグの國際司法裁判所判事だった小田滋が 2年前に書いた 『 主權獨立國家的 「 台灣 」 ──台灣在國際法中的地位 』 ( 台北國際文化基金會出版 ) の精髄である。馬政權が全面親中で、民進黨高層が台灣主權の方向問題でウロウロしており、更に一部の緑陣營人士が米國で法廷闘争により台灣を米國占領に戻そうとしている状況下では、この國際法專門家の台灣前途觀は重要である。
日本人學者小田滋は 練達の 國際法學者で27年間 ( 連續 3期 ) 國連の 「 國際法廷 」 の判事 ( 副所長も ) を務めた。更に日本國際法協會の會長である。
彼は台灣とも縁が深く、早くから祖父と共に來台し、台灣で育った。
李登輝・辜寛敏・邱永漢らと同窓である。
彼の著書中、三つの觀點が重要だ。
「 台灣屬於中國 」 毫無法律根據
第一に、小田曰く、北京のいう 「 台灣は中華人民共和国の一部分 」 とは、何ら法的根據のない政治的幻想である。いかなる國際法の觀點からしても 「 大陸と台灣は共に獨立主權國家である 」 。
兩岸が互いに承認できないのは、國連の五大常任理事國が絡んでいる。常任理事國のポストは二國で分有できないのだ。普通の會員國は往事の東西ドイツや今日の南北朝鮮のように普通の會員になれ、一國のポストを占有できる。當然先ず、東西ドイツや南北朝鮮は共に相互に相手を政治實態と認めなければならない。
小田滋曰く、國連は當時、北京が 「 中國 」 のポストを代表すると認めた。
「 台灣は中華人民共和国の一部 」 という前提はなし。
この國連決議は、中國の代表権問題を解決しただけで、台灣 ( の地位と前途 ) は問題にしていない。
つまり、
「 中華民國は國連を離れた。但しその主權國家の地位には何ら動搖なし 」
なのだ。
なぜなら國際法上、國家とは 「 土地・人民・政府 」 を含み、 「 外交能力 」 などの要素も加わる。
だが國交國の多少は、死活的要因ではない。
小田滋は 例を擧げて説明する。
日本と北朝鮮に外交關係なし。
だがこれで北朝鮮が國家でないことにはならない。
今日、米國はキューバと國交がない。
だがキューバは國家である。
──これが常識なのだ。
小田滋曰く、今台灣が國連に入れないのは、台灣が主權國家でないからではない。
台灣が外交關係を持つのを北京が斷乎阻んでいるからである。
各國は對中關係上の現實的考慮から、または 北京の立腹を恐れて、台灣の承認を控えているだけだ。
つまりこれは法律問題ではない。
專制中國が國際上、民主國台灣を封殺している政治問題なのであると。
二戰結束時没抓住獨立機會
第二に、台灣は制憲正名により正常な國家とならねばならない。
小田滋曰く、國際法上、台灣と對岸の中國は何ら隷属關係にない。
從って凡そ台灣と中華人民共和国の間に獨立問題は存在しない。
「 台灣人が中華民國・國民黨から獨立する 」 問題が存在するだけだと。
彼曰く、台灣の前途には新憲法制定と國號變改問題があり、これで台灣は正常な國家になれる。
彼はこうも言う。
彼が李登輝元總統と會った時、李登輝曰く、 「 台灣は中華人民共和国から獨立する問題はない。元々獨立國なのだから 」 と。
だがこの言説は 台灣と對岸中國の關係を解決するが、台灣と中華民國の關係は解決しない。
李登輝は その後 「 二國論 」 を提唱したが、中華民國が台灣を擁する實態は變らない。
小田滋は ハッキリこう指摘する。
日本が台灣を放棄した時、台灣が 「 獨立台灣國 」 を建國するのは不可能だったと。
台灣には國際上、獨立を主張する卓越した政治家が居ず、インドのガンジーのような指導者も居なかった。
そして多くの台灣人が國民黨の台灣進出を 「 光復 」 ( 祖國復歸 ) として歡迎し、台灣の主權を中華民國が握るのを何の抵抗もなく受入れた。
今や台灣の制憲正名が正常な國家になる必要條件となったが、馬英九が總統になり、國民黨が全面親中路線を取ったため、この條件を滿たすことは頗る難しくなった。
だが 「 台灣が中華民國・國民黨から獨立する 」 必要については、益々多くの民衆が納得しつつあり、深く人心 ( 特に台灣の政治家 ) に浸透中である。
從って、歴史の機會が巡って來れば、事實となろう。
把國民黨〈走旱〉到金門馬祖
第三に、國民黨が 「 一中 」 を言うのは、人をも自分をも欺くものである。
小田滋は日本を例にしていう、
日本語の 「 中國 」 は漢語と全く同じ。
元來、 「 中國 」 とは、歴史的文化的概念であって、國際法上の概念ではない。
但し北京は國連で 「 中國 」 の代表權を持ち、最近は經濟・軍事でも興隆中である。
國際社會、とまでは言わない。
台灣の近隣で台灣に好意を持つ日本國民も、 「 中國 」 とは中華人民共和国と考えていて、中華民國とは考えていない。
從って馬政權が 「 一中とは中華民國 」 といくら強調しても効果なく、 「 中國 」 を浮立たせるだけである。
要するに 「 一中 」 は北京を押出し、台灣の影を薄くする語句なのだ。
そこで小田滋は 「 二中一台 」 構想を持出す。
中華人民共和国は大陸を統治している。
中華民國は金門・馬祖に移轉し、台灣人は台灣に住む。
かくて 國民黨は法律上中華民國の金門・馬祖を擁して北京の中國と 「 一中各表 」 ( 一つの中國、各自表明 ) を言續けるなり、終極統一をやるなりする。
台灣人は自分の土地と國家を持つ。
この 「 二中一台 」 構想に、國民黨は當然のことながら同意できなかろう。
彼らは必ずや死ぬまで台灣に抱きついて放さぬに違いない。
だが國民黨が對岸の共産黨と張合えば、台灣人の運命は對岸に握られたも同然となる。
台灣が 「 中華民國 」 と張合えば、 「 台灣 」 は 永久に浮かばれず、中國に呑込まれてしまう。
だから 中華民國と國民黨から獨立するのが、緑陣營の採るべき方向なのである。