天津市における外資系企業の直接投資の状況

『天津市における外資系企業の直接投資の状況』

(中国を考える6)


天津社会科学院客員講師

天津市外商投資服務中心招商代表

古森崇史


1.はじめに

筆者は、9月に天津市政府関係者、大学関係者及び天津市に進出している日系企業関係者等に対し、現在の天津市の投資環境等についての聞き取り調査を行った。何点か、気になった点について述べたい。


  第一に、労働力不足の問題である。

  ご存知の通り、「中国は、世界の工場であると同時に、世界の市場である。」とよく言われる。しかしながら、多くの日系企業関係者と話してみて思った事は、やはり、中国を、「世界の工場」すなわち低コストを武器にした製造基地だと認識している人が多いという事である。反対に、「世界の市場」すなわち新興市場として、本当の意味で、中国でのマーケティング戦略を考えている企業は、まだ少数であるのではないかと感じた。


  そして、中国を「世界の工場」と認識する多くの日系企業にとって、優秀な工場労働者確保が、最も重要な課題であるようだ。中国には、余剰労働力が、2億人は存在すると言われているので、工場の労働者確保は、簡単だと思われるかもしれない。しかし、実際は、労働者確保が大変難しい状況になっている。

これに関しては、沿海部の各都市では、インフレの急速な進行により、出稼ぎに来ても、生活費がかさむため、わざわざ沿海部まで来る必要は無いと、労働者が感じているようである。また、特に80年代以降に生まれた若者の中に、苦労して沿海部で働く位なら、内陸の小都市で、のんびり働いた方がいいと感じる者が、相当存在するという話も聞く。

反対に、ほとんどの企業が、大卒以上のホワイトカラーは、そんなに必要としていないようである。もし、ホワイトカラーの人材が必要になっても、人材の募集をしたらすぐに応募が来ると言う事である。

このように、大卒以上のホワイトカラーは、十分足りており、あまり必要とされていないが、工場労働者の不足が相当深刻であるという状況になっている。


  第二に、労働契約法の影響は、予想以上に大きかった。

  2008年1月1日から施行された労働契約法の影響は、予想以上に大きいようである。また、最低賃金が、頻繁に改正されている事もあり、以前に比べて、人件費が、大体30%〜50%位上昇したと言う企業が多かった。

これ以外に、労働者の権利が以前より数段保護されるようになったため、経営者側は、労働者側との交渉に苦労しているようである。某日系会社でも、賃金の上昇が少ないという理由で、ストライキを行い、経営者は相当頭を悩ませたようである。


  第三に、日系企業の利益は、予想以上にあるようである。

  2008年に入り、広東省の繊維関係の企業が多く撤退したり、山東省の韓国企業が夜逃げしたりしたという報道がなされている。

しかし、今回、聞き取り調査をしてみて、「以前のように、比較的簡単に儲かるという時代は、終わった。しかし、利益が全く無いのではなく、ある程度は儲かる。」という企業が多いのが実情ではないだろうかと感じた。

つまり、今後、日中間の経済関係は、今までのような過熱する事はなくなるものの、安定期に入っていくのではないだろうか。


  第四に、欧米企業が増加している。

  天津市政府関係者によれば、「日本と韓国からの直接投資は減少しつつある。しかし、欧米からの直接投資は、増加しており、場合によっては、投資の受け入れを断る事もある。以前では考えられなかった。」ということである。

確かに、大型プロジェクト等で、欧米の企業の投資が最近目立っている。また、例えば、外資系スーパーについていえば、天津ではカルフールが圧倒的な存在感があり、その勢いは止まりそうに無い。


2.天津市における外資系企業の直接投資の状況

  1では、聞き取り調査による筆者の感想を述べた。2では、天津市における外資系企業の動向の具体的な統計について、天津市政府の資料を筆者が要約して、紹介することにする。


        天津市(2007年度)

外資系企業による直接投資受入れに関する年度報告
(日本語要約版)



天津市人民政府外商投資弁公室

日本語要約版作成者:古森崇史

(日本語要約版作成日:2008年10月6日)


1.天津市における外資系企業の直接投資の基本状況

中国の改革開放が進む中、天津濱海新区の経済戦略上における地位が向上し、天津市全体の投資環境は、2007年も更に改善された。

この結果、多くの世界中の多国籍企業が、この魅力ある地に次々と投資を行い、2007年度の外資系企業よる天津への直接投資額は、初めて100億ドル(契約額ベース)を突破し、過去最高額となった。

外資系企業の構造も変化し、各プロジェクトの質の向上や規模拡大が目立ち、投資額の増加量と増加率は、共に今まで最高を記録した。

2007年末、天津市が設立を批准した外資系企業は、累計で20,357社に達し、直接投資額は、契約ベースでは778.43億ドル、実際実行ベースでは397.50億ドルに達した。


1−1.投資方式

  2007年度における、各投資方式による直接投資の状況に関しては以下の通りである。


(資料1)2007年度の直接投資の状況

投資方式

プロジェクト数

契約額

実際実行額

前年比

割合

金額

前年比

割合

金額

前年比

割合

1・合資

248

-21.77%

27.37%

236,753

+33.98%

20.55%

181,363

+52.67%

34.36%

2・合作

12

-52.00%

1.32%

22,999

-27.98%

2.00%

24,647

-33.79%

4.67%

3・独資

646

-8.76%

71.30%

892,104

+48.06%

77.45%

321,766

+25.17%

60.97%

合計

906

-13.71%

100%

1,151,856

+42.00%

100%

527,776

+27.77%

100%

(※)金額の単位:万ドル


1−2.投資した国・地区

  2007年度、世界の60の国・地区の企業が天津に投資を行った。具体的には、以下の通りである。


1-2-1.地域別の投資状況

地域別には、アジアからの投資が最も多く、契約額は69.21億ドルであった。この次に、ラテンアメリカ、北米、ヨーロッパ、大洋州、アフリカと続く。増長率は、高い順に、アジア、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、北米となっている。


(資料2)2007年度の天津へ直接投資を行った地域

 

プロジェクト

契約額

実際実行額

昨年比

割合

金額

昨年比

割合

金額

昨年比

割合

アジア

588

-6.67%

64.90%

692,082

+66.40%

60.10%

288,052

+43.30%

54.60%

アフリカ

5

-61.54%

0.55%

7,474

-38.40%

0.60%

9,483

-25.20%

1.70%

ヨーロッパ

91

-22.22%

10.04%

99,662

+8.00%

8.70%

41,994

+15.10%

8.00%

ラテンアメリカ

85

-23.42%

9.38%

211,512

+39.50%

18.40%

130,684

+2.50%

24.80%

北米

113

-24.67%

12.47%

119,066

+5.60%

10.30%

45,841

+57.90%

8.70%

大洋州

24

-17.24%

2.65%

22,060

-16.20%

1.90%

11,723

+82.80%

2.20%

合計

906

-13.71%

100%

1,151,856

+42%

100%

527,776

+27.80%

100%

(※)金額の単位:万ドル


1-2-2.各国・地区における外資系企業の直接投資の契約額について

国・地区別に見ると、2007年度の契約額が多かった順に、(1)香港、(2)バージン諸島、(3)アメリカ、(4)シンガポール、(5)イギリス、(6)韓国、(7)日本、(8)ドイツ、(9)フランス、(10)サモアである。

これらの10の国・地区の契約額は、106.1億ドルであり、2007年の外資系企業の天津への直接投資の契約額の92.1%を占める。


(資料3)2007年度の天津へ直接投資の契約を行った国・地区

 

国・地区

契約額

割合

1位

香港

53.2億ドル

46.2%

2位

バージン諸島

17.9億ドル

15.6%

3位

アメリカ

10.6億ドル

9.2%

4位

シンガポール

6.0億ドル

5.2%

5位

イギリス

4.6億ドル

4.0%

6位

韓国

4.4億ドル

3.8%

7位

日本

4.2億ドル

3.7%

8位

ドイツ

2.0億ドル

1.7%

9位

フランス

1.7億ドル

1.5%

10位

サモア

1.5億ドル

1.3%


1-2-3.各国・地区における外資系企業の直接投資の実際実行額について

  外資企業の直接投資の実際実行額のトップ10は、(1)香港、(2)バージン諸島、(3)シンガポール、(4)韓国、(5)アメリカ、(6)日本、(7)バルバドス、(8)ケイマン諸島、(9)ドイツ、(10)サモアである。

  これらの10の国・地区の直接投資の実際実行額は、47.6億ドルであり、2007年度の外資系企業の天津への直接投資額の実際実行額の90.2%を占める。


(資料4)2007年度の天津における、各国・地区の直接投資の実際実行額

 

国・地区

実際実行額

割合

1位

香港

14.8億ドル

28.0%

2位

バージン諸島

9.6億ドル

18.1%

3位

シンガポール

5.3億ドル

10.1%

4位

韓国

4.7億ドル

8.8%

5位

アメリカ

4.1億ドル

7.7%

6位

日本

3.4億ドル

6.5%

7位

バルバトス

1.8億ドル

3.4%

8位

ケイマン諸島

1.6億ドル

3.1%

9位

ドイツ

1.3億ドル

2.5%

10位

サモア

1.0億ドル

1.9%


1-2-4.2007年までの直接投資累計額について

  2007年度末までに、131の国・地区が、天津へ直説投資を行った。契約額の累計のトップ15は、(1)香港、(2)アメリカ、(3)バージン諸島、(4)韓国、(5)日本、(6)シンガポール、(7)台湾、(8)ドイツ、(9)イギリス、(10)カナダ、(11)オーストラリア、(12)オランダ、(13)フランス、(14)イタリア、(15)スイスである。

  2007年までのこれら15の国・地区からの直接投資の累計額は、天津市全体の累計額の38.48%である。


(資料5)2007年度末における各国・地区の直接投資(契約額)累計額

順位

国・地区

累計額

割合

1位

香港

272.90億ドル

38.48%

2位

アメリカ

113.58億ドル

16.01%

3位

バージン諸島

72.29億ドル

10.19%

4位

韓国

52.62億ドル

7.42%

5位

日本

51.56億ドル

7.27%

6位

シンガポール

23.64億ドル

3.33%

7位

台湾

23.45億ドル

3.31%

8位

ドイツ

14.06億ドル

1.98%

9位

イギリス

11.87億ドル

1.67%

10位

カナダ

9.01億ドル

1.27%

11位

オーストラリア

8.24億ドル

1.16%

12位

オランダ

7.77億ドル

1.10%

13位

フランス

7.50億ドル

1.06%

14位

イタリア

6.11億ドル

0.86%

15位

スイス

6.02億ドル

0.85%


1−3.投資産業

  2007年度の、外資系企業の各産業への投資状況は、以下の通りである。

第一次産業への投資は、4のプロジェクト、契約額3,359万ドル、実際実行額492万ドルである。

第二次産業への投資は、445のプロジェクト、契約額480,401万ドル、実際実行額262,155万ドルである。

第三次産業への投資は、457のプロジェクト、契約額668,096万ドル、実際実行額265,130万ドルである。


(資料6)各産業への外資系企業の投資の状況

 

プロジェクト数

契約額

実際実行額

割合

前年比

金額

割合

前年比

金額

割合

前年比

第1次産業

4

0.44%

-50.00%

3359

0.29%

-38.40%

492

0.86%

-55.10%

第2次産業

445

49.10%

-21.20%

480,401

41.70%

+26.50%

262,155

49.70%

-2.10%

第3次産業

457

50.40%

-4.20%

668,096

58.00%

+56.90%

265,130

50.20%

+85.30%

(※)金額の単位:万ドル


1−4.投資区域

  2007年度、天津市の21の区・県(開発区、保税区、新技術産業園区を含む)において、外資系企業が直接投資を行った区域に関する状況は、以下の通りである。

  契約額では、多い順に、(1)天津経済技術開発区、(2)天津港保税区、(3)津南区、(4)西青区、(5)静海県、(6)宁河県、(7)大港区、(8)新技術産業園区、(9)北辰区、(10)武清区である。

実際実行額では、多い順に、(1)天津経済技術開発区、(2)保税区、(3)西青区、(4)北辰区、(5)武清区、(6)東麗区、(7)津南区、(8)和平区、(9)南開区、(10)新技術産業園区である。


(資料7)2007年度における天津市各区への外資系企業の直接投資の状況

 

項目数

契約額

実際実行額

 

割合

金額

割合

金額

割合

1・天津経済技術開発区

187

20.64%

391,070

33.95%

193,055

36.58%

2・天津港保税区

164

18.10%

312,265

27.11%

115,464

21.88%

3・新技術産業園区

58

6.40%

31,522

2.74%

12,281

2.33%

4・12の区及び県

368

40.62%

336,435

29.21%

160,062

30.33%

 

東麗区

27

2.98%

25,928

2.25%

17,799

3.37%

 

西青区

95

10.49%

48,828

4.24%

31,300

5.93%

 

津南区

61

6.73%

61,012

5.30%

16,545

3.13%

 

北辰区

51

5.63%

31,003

2.69%

26,807

5.08%

 

宁河県

20

2.21%

34,194

2.97%

4,932

0.93%

 

武清区

33

3.64%

28,332

2.46%

20,419

3.87%

 

静海県

31

3.42%

40,880

3.55%

6,420

1.22%

 

宝坻区

12

1.32%

13,414

1.16%

6,293

1.19%

 

薊県

1

0.11%

2

0.00%

3,871

0.73%

 

塘沽区

20

2.21%

16,196

1.41%

11,848

2.24%

 

漢沽区

2

0.22%

3,407

0.30%

1,611

0.31%

 

大港区

15

1.66%

33,240

2.89%

12,218

2.31%

5・市内6区

129

14.24%

80,564

6.99%

46,915

8.89%

 

和平区

23

2.54%

19,616

1.70%

13,921

2.64%

 

河東区

16

1.77%

13,149

1.14%

4,234

0.80%

 

河西区

41

4.53%

16,798

1.46%

5,846

1.11%

 

南開区

33

3.64%

21,059

1.83%

13,752

2.61%

 

河北区

13

1.43%

4,083

0.35%

6,689

1.27%

 

紅橋区

3

0.33%

5,858

0.51%

2,473

0.47%

総計

906

100%

1,151,856

100%

527,777

100%

(※)金額の単位:万ドル



2.天津市における外資系企業の主な特徴

<ポイント>

●規模が拡大。

●世界トップ500企業の投資が増加し続けている。

●外資系企業の増資が急増。

●濱海新区の大きな効果。

●第三次産業への投資が急増。


2−1.規模が拡大している

  2007年、天津市で新たに批准をした外資系企業のプロジェクト1件あたりの平均規模は、963.4万ドル(前年比+432.3万ドル、増加率+81.4%)である。

  2007年、新たに契約した外資系企業の各プロジェクトの規模に関しては、以下の通りである。


(資料8)2007年度の外資系企業の規模別プロジェクト数

規模

プロジェクト数

契約額

前年比

1,000万ドル以上

260

81億ドル

+82.40%

3,000万ドル以上

76

45億ドル

+90.30%

5,000万ドル以上

29

27億ドル

+110%


2−2.世界トップ500企業の投資が増加している

  2007年の世界トップ500企業に入っている企業が、天津に46のプロジェクト(新項目は15、増資項目は31)への投資を行い、契約額は6.73億ドルであった。

  2007年12月末までに、世界トップ500企業の内、128社が359項目のプロジェクトの直接投資を行った。契約額の累計は、61.85億ドルである。


2−3.外資系企業の増資が増加している

  2007年、全部で769社の企業が増資を行った。外資系企業の増資額は、27.90億ドル(前年比+10.1%)であった。

  1,000万ドル以上増資した企業は、63社(同+27.5%)で、増資額の合計は17.20億ドル(同+45.8%)であった。P&G等5社の有名企業が、5,000万ドル以上の増資を行った。


2−4.濱海新区の開発の効果は絶大である

  天津市の濱海新区の開発開放が進むにつれて、多くの外資系企業が、次々と新しいプロジェクトを濱海新区で開始した。

2007年、外資系企業388社が濱海新区へ投資を行った。契約額は、75.62億ドル(前年比+22.5%)であり、天津市全体の65.6%を占める。また、このうち、増資額は、17億ドルで、天津市全体の外資系企業増資額の61%を占めた。


2−5.第三次産業が、外資系企業の投資を引き付けている

  2007年、天津市において、外資系企業の第三次産業への投資が急激に増加し、第二次産業を超えた。契約額は前年比+56.9%、実際実行額は前年比+85.3%であった。

  第三次産業の項目の内、増加率が多かった業種は、(1)不動産(契約額:前年比+96.6%、実際実行額:同+124.5%)、(2)サービス業(契約額:同+78.6%、実際実行額:同+177.4%)(3)運輸・倉庫業(契約額:同+37.7%、実際実行額:同+69.8%)である。


3.天津市における外資系企業の企業運営状況と経済発展における役割

<ポイント>

●国民経済においての重要性が高まっている。

●天津市の優位産業を支えている。

●天津市の貿易額増加へ貢献している。


  2007年度の天津市による定期検査を受けた外資系企業は、6451社であった。これは、天津市で登記を行っている外資系企業総数11429社の56.4%にあたる。

統計局は、これらのうち6241社に対して調査を行った。その結果は、以下の通りである。


(資料9)2007年度における外資系企業経営指標一覧

主要指標

2007年度実績

前年比

生産総額

5038.22億元

+11.7%

売上収入

5797.90億元

+14.2%

輸出額

282.99億ドル

+5.4%

利益総額

355.13億元

+18.6%

納税額総額

322.65億元

+13.7%

従業員数

61.47万人

+7.5%

従業員報酬

195.14億元

+23.8%


この事から分かるように、天津市における外資系企業にとって、投資回収率は高く、約25%(前年比+2.9%)となっている。


3−1.国民経済における重要性の高まり

2007年、天津市における外資系企業の状況は、以下の通りである。


(資料10)2007年度の天津市の経済における外資系企業の割合

●天津市の工業総生産額は、10075.07億元で、その内49.4%は外資系企業によるものである。

●工業増加値は、2644.79億元(前年比+18.2%)であり、その中の46%(同+4.9%)は、外資系企業によるものである。

●固定資産投資のうち17%は、外資系企業によるものである。

●全市納税額のうち、外資系企業が占める割合は、19.5%である。

●外資系企業での就業者数は、61.47万人(同+7.5%)であり、天津市における就業者の30.9%(同+1.6%)が外資系企業で働いている。

 

以上のように、外資系企業は、天津市の経済建設と発展の中で、必要不可欠な存在となっている。


3−2.優位産業を支える重要な柱

  天津市の六大産業とは、(1)電子、(2)化学工業、(3)バイオ・医薬、(4)自動車、(5)新エネルギー・新材料、(6)冶金である。


2007年、外資系企業によるこの六大優位産業への投資に占める割合は引き続き上昇した。契約額ベースでは、26.43億ドルで、22.9%(前年比+3.1%)のシェアを占め、実際実行額ベースでは、40.89億ドルで、77.5%(同+38.8%)のシェアを占める。特に、電子関係への投資が目立つ。

 

(資料11)2007年度の天津市の六大産業に対する外資系企業の直接投資の状況

 

契約額

実際実行額

(1)電子

113,219万ドル

297,831万ドル

(2)化学工業

59,727万ドル

47,982万ドル

(3)バイオ・医薬

19,636万ドル

9,035万ドル

(4)自動車

38,875万ドル

22,267万ドル

(5)新エネルギー・新材料

3,247万ドル

4296万ドル

(6)冶金

29,562万ドル

27,472万ドル


  2007年度の、六大産業における、外資系企業の各経営指標は、以下の通りである。


(資料12)2007年度の天津市の六大産業における外資系企業の各種指標

 

総生産値
(万元)

利益総額
(万元)

売上収入
(万元)

輸出
(万ドル)

税金総額
(万元)

(1)電子関係

20,425,550

588,755

20,582,469

1,866,134

386,223

(2)化学工業

5,575,616

387,381

5,935,734

182,211

223,399

(3)バイオ関係

1,041,874

128,663

885,678

16,116

76,363

(4)自動車

7,164,828

586,642

7,306,058

65,770

601,189

(5)新エネルギー・新材料

545,999

7,110

568,758

45,817

9,339

(6)冶金

441,508

12,993

506,105

13,545

8,356

合計

(天津市における割合)

35,195,375
(69.86%)

1,711,544
(48.19%)

35,784,802
(61.72%)

2,189,593
(77.37%)

1,304,869
(40.44%)


  外資系企業は、天津市で急速に発展すると同時に、技術の向上等を中国側にもたらし、天津市の高レベルの新技術産業の発展に重要な役割を果たしている。更に、天津の伝統的な産業のレベルアップと技術改良に貢献している。


  2007年、天津市の高レベルの新技術産業の、工業総生産額は、2,825億元(同+5.7%)で、その内外資系企業によるのは、2,529億元(同+5.1%)であり、天津市全体の89.5%(同+1.2%)を占める。


3−3.貿易額の増加に貢献している

2007年度の天津市の外資系企業の、貿易の状況は、以下の通りであり、天津市の貿易額増加に貢献している。


(資料13)2007年度の天津市の外資系企業の貿易の状況

●2007年度、天津市における外資系企業の輸出入額の総額は、542.19億ドル(前年比+2.8%)であった。これは、天津市全体の輸出入額の75.8%を占める。

●外資系企業の輸出入の内訳は、以下の通りである。輸入額は、259.2億ドル(同+0.1%)で、天津市全体の輸入額の77.6%を占める。また、輸出額は、282.99億ドル(同+5.4%)で、天津市全体の輸出額の74.2%を占める。

●2007年、天津市全体の輸出企業の、輸出額上位100社のうち、76社(同+9社)が外資系企業である。このうち、輸出額が1億ドルを超える外資系企業は、39社(同+7社)ある。

●貿易方式に関しては、加工貿易が依然として外資系企業の貿易方式である。2007年度の外資系企業の加工貿易による輸出額は、224.55億ドルであり、天津市全体の加工貿易における割合は、97.6%である。(参考:資料14)

●外資系企業の輸出商品の内、携帯電話等の割合が最大で、輸出額は23.9%を占める。その次が、集積回路で、7.1%である。このような、外資系企業の高レベル新技術産品等は、天津市の輸出商品の構成を高めるのに重要な作用がある。

●商品の主な輸出相手国・地区は、(1)アメリカ、(2)韓国、(3)日本、(4)シンガポール、(5)ドイツ、(6)香港等である。


(資料14)天津市の外資系企業の各貿易方式の状況

貿易方式

輸出金額(万ドル)

貿易方式

輸入金額(万ドル)

一般貿易

495,834

一般貿易

881,307

委託加工貿易

102,493

委託加工貿易

74,881

加工貿易

2,143,023

加工貿易

1,058,235

逆委託加工貿易

6

設備の輸入

1,775

保税倉庫貨物

588

リース貿易

219

保税区倉庫貯蓄貨物等

87,591

外資系企業の投資輸入設備

99,948

旅行購物商品

272

保税倉庫貨物

1,469



保税区倉庫貯蓄貨物等

466,185



輸出加工区の輸入設備

1,999



旅行購物商品

3128

(2008年10月21日)