≪中国人の視点から見た中国とインドの比較≫
(中国を考える1)
天津社会科学院客員講師 古森崇史
中国に留学中、日亜協会ホームページでの私の報告に対して、様々なご意見を頂きました。ありがとうございました。
日本に帰国後も、私の所にたくさんの中国人から様々な中国の情報が寄せられております。そこで、天津留学通信の続編として、研究成果を発表したいと思います。どうか、ご愛読下さい。
日本では、特に2005年の中国での反日デモ以降、「中国への投資を今後どうするべきか?更に投資した方がいいのか?それとも、撤退した方がいいのか?」、「撤退するとしたら、今後は、インドにシフトした方がいいのか?」等という声が聞かれる。
特に、インドに対する関心が高まっているのは周知の事実である。中国でも、インドに関する文章等を、最近よく見かけるし、中国政府の関係者がインドへ視察に行く事もある。
そこで、今回は、中国人がインドの事をどのように見ているのかについて、中国社会科学院と北京大学の研究者の論文の一部を要約して紹介したい。
まず、中国社会科学院世界経済・政治研究所の王玲副研究員は、『2006年:全世界の政治と安全報告』(社会科学文献出版社、2006年1月)の中に収められた≪世界主要大国の総合国力の比較≫という論文の中で、以下のように分析している。
(表1)
1.経済 | 一人当たりのGDPは、1982年中国は275ドル、インドは274ドルでほぼ同じだが、2004年中国は1269ドル、インドは578ドルとなっている。よって、両国の差は拡大し続けていると言う事が出来る。 |
2.軍事 | インドは、核兵器を有しているものの、総体的に見て中国より弱く、ロシアに頼っている。 |
3.外交 | インドは、1950〜1960年代の気力を失い、第三世界における影響力は中国より弱い。 |
4.周辺国家に対する政策 | 政策面では中国はインドよりも成功しているし、外交面でもインドは中国に及ばない。 |
5.資源等 | 人的資源の育成・英語のレベル・大学教育等の方面では、インドの方が勝っている。しかし、総体的に見ると中国の方が資源面でも勝っている。 |
6.政府の支配力 |
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結論 | 予見可能な範囲の将来において、インドの総合国力が中国を追い抜くのは困難である。ただし、国力資源をうまく使う等すれば、将来中国の総合国力の重要な競争相手になるだろう。 |
次に、北京大学国際関係学院の張敏秋教授は、≪インド経済をどのように見るか≫(『国際政治研究』、2004年第3期)の中で、インド経済について以下のように分析している。
(表2)
1.良い点 |
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2.問題点 |
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結論 |
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この他にも、インドと中国の比較に関する論文をいくつか読んだが、結論は大体同じであった。しかし、中国の雑誌や新聞等にインドに関する文章が予想以上に多くあった事を考えれば、中国としてもインドの動向を大変気にしているのではないかと思われる。今後も、インドに関する報道等は、更に増えると思う。
いずれにせよ、中国とインド共に、経済発展のためには、外国の企業による投資が必要なのは明らかで、外国企業を誘致するため、両国が競い合って、インフラ整備を進め、税金面での優遇措置をとる等の政策を打ち出す事は、外国企業にとっては喜ばしい事である。日本の企業は、中国とインドそれぞれの良い点と問題点を理解した上で、どちらの国に投資する事が企業のためになるかについて、冷静に分析し、決定してほしい。(2007年11月11日)