天津日記13 中国脅威論について

天津日記13(2007年5月15日)

≪中国脅威論について≫

株式会社大協 企画室

中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史

ご存知の通り、中国経済の成長に伴い中国の国力が増しているため、日本では、多くの人が、「中国脅威論」を主張しています。その国力に関してですが、≪2006年全世界政治・安全報告≫(社会科学文献出版社)によれば、各国の「総合国力」について、中央政府のシンクタンクである中国社会科学院は、以下(参考資料)のように分析しています。

(参考資料)
 国名経済力科学技術力軍事力資源力社会発展政府の
支配力
外交力成長率総合国力
1アメリカ3251171822495475591851310.43%8639
2日本215811118062264161691000.26%4986
3フランス15889948142014191841190.31%4319
4イギリス16028568302174001711120.75%4188
5ドイツ17628546231914191841070.48%4139
6中国13213125084832451331162.98%3119
7ロシア5985048635213321571182.20%3092
8カナダ836227176532423174991.92%2467
9イタリア743252227228397161971.97%2106
10オーストラリア554147130375410148892.56%1852

この分析によると、日本は、世界で総合国力が2位と言う事になります。各分野の評価について考えてみますと、2006年度の中国の国防費は2807億元(約42105億円)で、48139億円の日本より少ないですが、2007年度は日本を超えるようですので、軍事力の評価に関しては、様々な意見があるかも知れません。しかし、それ以外の各分野の評価では、ほぼ意見が一致するのではないでしょうか。

その軍事面に関してですが、中国側の認識と日本側の認識は全く異なります。例えば、≪江蘇科学技術大学学報≫(2006年3月、P38)によれば、≪2004年アメリカの国防費は、4559億ドルで、GDPの3.9%であるが、中国の国防費は2117億元(約256億ドル)でGDPの1.6%であり、アメリカの国防費は中国の17.8倍である。同じように、1人あたりの国防費を考えると、アメリカ人1人当たりの国防費は1540ドルで、中国人1人あたりの国防費は約20ドルであり、アメリカは中国の77倍である。(中略)よって、我々は、「中国は脅威なのか?それとも中国が脅威を受けているのか?」という疑問を抱かざるを得ない。≫と述べています。

中国側の視点から書かれた中国脅威論に関する論文をいくつか読みましたが、冷静に分析したものも多く、参考になりました。私個人としては、日本と中国が、お互いに良いパートナーとして認識し、良い関係を更に築いて欲しいと願うばかりです。