天津日記12(2007年4月25日)
≪中国の大学の良い点と問題点≫
株式会社大協 企画室
中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史
私が2年半前中国に来た時、実は中国に対してそれほど興味があったわけではありません。但し、中国に来てからは、出来るだけ中国の事を理解しようとしてきましたし、客観的に様々な事を分析してきました。その結果、現在では、中国の良い点と問題点が少しずつ分かってきました。
そこで今回は、中国の大学の良い点と問題点について、何点か述べさせて頂きます。
まず、良い点としては、以下のような点があります。
第一に、愛校心が強く、クラスメートの結束強い事です。中国の大学(院)では、大学から家が近い人を除いて中国人学生は、原則として全員寮生活をします。クラスメートの中には、中国政府幹部の子息もいますが、全員同じ扱いです。私も、1年間中国人と同じ寮に住みました。全員同じ設備で、なんら区別はありません。その結果、皆に一体感と愛校心が生まれるのです。
第二に、留学制度を年々充実させている事です。例えば、私の通う南開大学では、留学に関して最近新しい政策を打ち出しました。大学の時成績が最も優秀(上位3%)だった生徒を、大学卒業と同時に、ハーバード大学等の大学院に推薦して入学させて博士号を取得させ、帰国後大学の教員として雇用するという制度の開始を決定しました。また、大学院生の場合も、多くの生徒が留学します。私が所属するゼミでも、もうすぐ博士課程を修了する学生を除くと、約半分の学生がまもなくアメリカ・イギリス等に留学します。海外留学期間中、学費や生活費の心配はありません。
第三に、ダブル学位取得制度です。中国の一部の大学では、大学1年と2年の成績が優秀である学生は、他の学部の授業にも出席して、2つの学部を卒業する事ができます。日本語学部と商学部を卒業したりすれば、条件のいい仕事を見つけることが出来ます。私の周りにも、大学では、法学と経営学の学位を取得し、大学院では、経済学を専攻し、しかも大学院時代に司法試験に受かり、中央省庁に就職予定というクラスメートがいます。
第四に、「大学」への昇格審査の厳格さです。中国では、「○○大学」と「○○学院」という2種類の大学があります。日本語に訳すと、総合大学と単科大学で、どちらも大学です。外交学院や国際関係学院等特別な大学を除き、ほとんどの「学院」は、予算や権限等が大きい「大学」になりたいと希望しています。しかし、審査が大変厳しく、なかなか「大学」になれないようです。また、大連外国語学院のように、一度「大学」になったにもかかわらず、再び「学院」へと戻される大学もあります。よって、各大学は教育部の評価をあげるために、色々な改革を行っています。
反対に、問題点としては、以下のような点があります。
第一に、大学の財政問題です。これは、現在の中国の大学で最も大きな問題です。ご存知の通り、中国では、大学生の数が急激に増えているため、校舎や寮などの設備を次々と建てなければなりません。授業料もずいぶん上がりましたが、あまり上げることも出来ません。そこで、各大学は、金融機関から多くの借金をしています。例えば、≪China Newsweek≫(2007年4月9日号)によりますと、名門の吉林大学は、なんと30億元(約450億円)の借金があるとの事です。そんなに借金があって今後の大学運営は、大丈夫なのだろうかと心配になりました。
第二に、非常勤講師の方が少ない点です。日本でしたら、公務員の方や一般企業の方が非常勤講師として授業をされますが、中国ではあまりそのような授業がありません。外国人として、研究者の方以外の授業を受けてみたいという気持ちがあります。但し、南開大学の先生方は大変教育熱心で、たいていパワーポイントを使って講義を準備されており、私は満足しています。