中国の日系企業に留意して頂きたい事

天津日記11(2007年4月1日)

≪中国の日系企業に留意して頂きたい事≫

株式会社大協 企画室

中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史


 中国では、来年北京オリンピック開催を控えていますが、その費用負担と言う理由で、外資系企業への課税が、現在の8.5%から25%へと2008年に大幅に上がる予定です。当然、中国の企業に対する課税も大幅に上がるようです。それにしても、税金が3倍になると言うのは、企業側の立場から考えると大変な事です。それにも関わらず、現在天津には、(実感としては、去年位から)日本企業の方が、天津へ視察しに来られる回数が、急増しています。これは、中国の中央政府が、天津を<将来の中国東北部の経済の中心地>にすると決定したためだと思います。

 中国の日系企業に留意して頂きたい事を、以下に三点述べさせて頂きます。

 第一に、「中国は<世界の市場>である」という事実を認め、重要な顧客が中国には多く存在しているという事実を認識する事です。中国人を、単なる<生産要素>の一部と考えてきた日本人は、その傲慢な考えを根本的に変えるべき時代に来ていると思います。

 2006年の天津市の1人あたりの平均GDPは、5177ドル(北京市は6210ドル、上海市は8000ドル以上)です。2003年は3126ドルでしたから、どれだけ早く経済成長しているかが分かると思います。「なんだ、GDPの平均はたった5000ドルか。日本製品の市場になるのは、まだ無理ではないのか。」と思うかも知れませんが、必ずしもそうとも言えないのです。

 日本では普通の家に住んでいる駐在員も、天津に来れば、「天津の六本木ヒルズ(?)」に住み、家政婦や運転手等を雇う事が出来ますので、「自分達日本人は、中国人とは別世界の人間だ。やはり日本は、世界の経済大国だ。」と思ってしまう気持ちは分かります。しかし、上海だけでなく、天津でも、日本人よりはるかに金持ちの人は、多く存在します。

 また、私の住んでいるマンションは、天津では、だいたい<上の下>位のレベルですが、駐車場には、ベンツ・レクサス・ワーゲン・ホンダ・日産等の高級車がたくさんあります。また、大学の中国人学生寮に行けば分かりますが、休みの時に超高級車で子供を迎えに来る親は多く存在しますし、飛行機で帰郷する学生も多く存在します。天津では、住宅ローンを払い終わっているならば、1家族の月収が、1万元(15万円)あれば、クラウンを購入する事は十分可能です。


 第二に、従業員の文化に対して理解を示すという事です。例えば、日本で、私のような若輩者が、仕事でミスをしてしまい、皆の前で上司に叱られたとしても、普通の事です。しかし、面子を非常に重んじ、日本に対して複雑な気持ちを抱いている中国では、皆の前(特に中国人部下のいる前)で、日本人が中国人を叱ると、想像以上に根に持たれ、意思の疎通が大変難しくなります。反対に、中国人との信頼関係が出来ると、本当に親切にしてくれます。


 第三に、従業員の安全を考えるという事です。例えば、日本の一般企業では、残業は当たり前ですので、中国でも、駐在員の方は、中国人に残業を強いているようです。本などに、「中国人は給料さえ払えば残業をする。」等と書いてありますので問題ないと思っているのかもしれません。

 多くの日系企業は、開発区と言われる市内から離れた所にあります。バス・電車は、早目に業務を終了しますので、タクシーで帰らざるを得ません。その場合、開発区から市内に帰る途中で、人気のない所を通らなければなりません。駐在員は、自分の運転手がいるから安全です。しかし、特に女性だけの場合ですと、様々な問題が起こる可能性があります。男性でも夜1人でタクシーに乗る事を、内心怖がっています。残業させた場合、残業代をきちんと払う事だけでなく、安全に帰宅できるかどうかもきちんと考えなければ、残業を快諾してもらえません。