天津日記9(2007年3月1日)
≪中国で一番良い大学≫
株式会社大協 企画室
中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史
日本に、一時帰国している間に、色々な人に、「中国だったら、やっぱり北京大学が一番良い大学なの?」と聞かれました。何を以て「一番良い大学」というのかは、以下に述べますように、中国は日本とかなり事情が違いますので結論を出すのは難しいのではないか思います。
第一に、大学入試(高考)の合格点で考えてみますと、北京大学が中国で一番合格最低点が高いです。しかし、中国の大学入試における合否の決定方法は独特であり、「結果として」都市部の人に有利となっています。そのため、北京大学合格者(北京市戸籍)より良い成績だったのに、無名大学に行かざるを得ない地方出身者が大変多く存在します(※1)。よって、大学名や合否の結果だけでは、本当にその学生の成績が優秀だったかどうかは分かりません。
第二に、研究内容・実績・教授の布陣などで考えてみますと、実は中国には特殊な大学(院)が多く存在するため、どの大学が良いか簡単に言えません。
例えば、「政治学」の場合、北京大学が一般的には一番評価が高いですが、実は国際関係学院や外交学院という政府と関係がある大学が実は一番良い研究環境です。また、「経済学」の場合、中国人民大学が、一般的に一番評価が高いです。しかし、実は中国社会科学院の大学院が経済学の分野では、最高の教授(研究員)を最も多く擁し、研究内容等も充実しています。更に、「外国語」の場合、北京外国語大学が一般的には一番評価が高いですが、実は解放軍外国語学院が実は一番良い環境であるといえます。
第三に、就職状況などを考えてみますと、有名大学だからといって必ずしも就職状況が良いわけではありませんので、簡単には結論が出ません。日本ですと、就職活動をする際に、大学名が重要ですが、中国では、(同じ専門なら有名大学が有利ですが)とにかく専門が何で、何の資格があるかが最も重要です。例えば、日本語一級に合格している天津外国語学院(大学)日本語学部卒業者は、一般企業への就職はほぼ問題ないですし、初任給は、天津で2500元前後です。しかし、たとえ北京大学文学部を卒業しても、必ずしも一般企業への就職先があるとは限らず、あっても北京で1500元(物価を考えれば天津でいう1000〜1200元)前後の可能性が高いです。
結論といたしましては、「総体的に考えれば、北京大学が中国で最も良い大学といえるが、必ずしも最も良いと言えない部分もある」という事になるのではないかと思います。
なお、私の通う南開大学は、日本に留学経験のある周恩来総理の母校である事もあり日本の歴史等の研究では、中国で最も有名な大学です。ですから、日本の歴史等を「本当に」学びたい中国人学生にとっては、南開大学は最も良い大学であることになります。
(※1)中国では、例えば北京大学の場合、北京市出身○人、天津市出身○人、河北省出身者○人…という風に募集をします。この時、地元の学生を多く合格させる傾向にあります。ですから、同じ点数でも北京市の学生は北京大学に合格したのに、河北省の学生は北京大学に合格できないという現象が起きます。