天津日記7(2007年2月1日)
≪中国における大卒者の就職事情≫
株式会社大協 企画室
中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史
(1)大卒者の労働市場について
中国は、年10%近くという驚異的な速度で年々GDPが増えていていますが、国家が大学生の募集拡大政策を打ち出しているため、それより早い「超」驚異的な速度で大学生が増加しています。それにより、色々な問題が出現しています。
現在、最も世間の注目を集めているのは、大卒者の就職問題です。15年前であれば、大学卒業者は将来の幹部候補生として特別扱いされていましたが、少なくとも都市部では、現在そのようなケースは稀です。≪2007年中国経済情勢の分析と予測(社会科学文献出版社)≫によりますと、大学生募集拡大政策の開始(1999年)以後の大学卒業生の数は、2003年の212.2万人(前年比+46.2%)、2004年の280万人(同+32%)、2005年の338万人(同+20.7%)、2006年の410万人(同+21.3%)と急増しています。
しかしながら、現在中国の労働市場で最も必要とされているのは、いわゆる労働者であり、ブルーカラーの仕事を嫌がる大学生に対する需要は相対的に不足しています。大学生がブルーカラーの仕事を嫌がる態度はおそらく皆さんの予想以上です。例えば、日本では、大学生が引越しの会社でアルバイト等をしてもほとんど誰も不思議に思わないはずです。しかし、中国の大学生はそのようなアルバイトをする事を大変嫌がります。家庭教師や通訳等しかやりたくないという人が本当に多いです。(大学院生ですと、その傾向は更に強くなります。)
民間企業がそのような大学生を雇う場合、要求が大変高いです。専門性と社会活動(インターンシップの経験等)がなかったら、良い条件の仕事はなかなか見つからないのが現実です。現在ですと、文系の場合、会計・金融・貿易・外国語等が専門の学生は何とか仕事が見つかるようですが、歴史・政治・文学等が専門の大卒者は仕事を見つけるのはなかなか難しいようです。
(2)待遇などについて
企業での待遇についてですが、北京大学が行ったアンケート調査によりますと、大卒者の平均初任給は、2005年は1588元(24000円位)で、2003年に比べてたった37元しか増えていません。
それに対して、地方から出てきたばかりの労働者に、「企業が払ってもいいと思う給料」は、2003年は655元(9800円位)だったのが、2005年は947元(14200円位)と44.6%も増加しており雇用者が労働者をかなり必要としている事が分かります。
なお、労働者全体の「実際の」平均収入は1044元(15700円位)です。その中でも、鉱山の採掘などの場合、労働者の平均収入は1387元(20800円位)であり、大学新卒者とそんなに差があるわけではありません。また、労働者の収入が、新卒でない大卒者より高い事も多くあります。
これらの調査は、あくまでもアンケート調査への有効回答を分析したもので、大学新卒者の実際の給料はもっと少ないと思います。確実に言えることは、大卒者の労働条件が予想以上に悪いという事です。現在、中国では多くの人が、「大学に入る事の意味」を真剣に考え始めています。