対中朝貢の転換と「仮免卒業」外交の勧め-岡本教授の時論・激論

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海南タイムズ  平成23年1月


対中朝貢の転換と「仮免卒業」外交の勧め


大阪国際大学名誉教授        岡本幸治


  中国は今や日本を抜いて世界第二の経済大国になったというので意気軒昂たるものがある。二十一世紀はアジアの世紀になる、その指導国家になるのが中国だとあちらの指導者は仰る。最近吉林省にある国立重点大学の一つ延辺大学で学生対象の意識調査を行い、対日意識、対外意識などで興味深い結果が得られた。その結果は近くまとめて発表するが、学生達の自国観だけを述べれば、「二十一世紀の世界で指導国となるのはどこか」という質問に対しては、一位の米国と小差で中国が挙げられ、「二十一世紀のアジアの指導国家はどこか」ではダントツで中国となる。日本は問題外という扱いである。今から二十年余り前には「二十一世紀は日本の世紀になる」というバラ色の未来像が国内外で声高に語られたものであるが、諸行は無常かつ無情。浮世の移ろいの激しさを痛感させられる調査結果であった。


  ところがである。日本にはまだ金余りバラマキ時代の意識が失せてはいないらしい。師走にわが中国大使は、対中ODAの増額を本国政府に具申したという。「ODA強化によって尖閣以後の日中関係も改善され、環境ビジネスや人材交流が促進されて日本の進出企業の利益や国益にもつながる」という見解らしい。大商社伊藤忠の社長としてその再建に指導力を発揮した丹羽宇一郎の力量を見込んだ民主党が、「政治主導」の新味を出すために民間人大使を選んだものだが、彼は「中国は大国なのだからそれにふさわしい軍事力を持つことは理解できる」と、日本に脅威を与える大々的な軍拡にお墨付きを与えるような発言をするなど、「商人大使」らしい愚かな発言をしたことがある。


  中国はお偉方から学生まで二十一世紀の輝ける指導国家であると自負しており、わが丹羽大使も大国であると認めている。空母まで造りハワイ以西の海を支配しようとしている超大国に対して、今や中進国に転落しつつある日本が経済援助をさせて戴くというのは、まことに失礼かつ僭越な行いではあるまいか。


  この背景には外務省中国派の意向が反映されていると私は考える。かつてODAで三兆数千億円、国策銀行による超低金利の円借款などで三兆円という莫大な資金を提供して中国の近代化を支援した日本は、その結果もはや途上国ではなくなった中国をODA対象国からは除いている。しかし環境対策などさまざまな口実をつけて中国に対する援助を継続し、できればそれを増額したいという強い願望を外務官僚は持っている。長年の習わしで援助を背景にしないと中国に対してまともな外交ができないという嘆き節を、私は現役外交官から直接聞いたことがある。ネパールなどでは、日本の援助が彼等の自助努力を損なっているという指摘を現地の公使から聞いたこともある。


  経済援助は相手にとっても良いことばかりではないのだ。中国はどうか。七兆円に垂んとする公的支援を行った結果どうなったか。親日国どころか、周知のように我に仇なす夜郎自大の敵性国家となっているではないか。


  経済援助をすれば相手国との関係がうまくいくという日本的・商人的発想は、中国に関しては全く通用しない。党の内外から指導力欠如を指摘され支持率激減にお困りの菅首相にとっては、自称「仮免卒業」の実力を不得意な外交においても示すチャンスである。方法は簡単。商人大使・外交官に対する民主お得意の「仕分け」の断行!