日亜協会 第129回例会のご案内
経済的発展の目覚しいインドにあって、カシミールは特別扱いされてきた。独立当初からカシミールは、幾多の軍事衝突を含むパキスタンとの紛争地帯であった。とりわけ、1990年代からカシミールの独立を求める武装勢力がヒンズー教徒の殺害を繰り返したことから、日本外務省はカシミールを危険地域と指定してきた。印パの事実上の国境の役割を果たしていた軍事的停戦ライン(LOC=Line of Control)を越えて、パキスタンで訓練を受けた民兵がインドの村を襲った「カーギル事件」など、カシミール紛争は続発してきた。
しかしながら、2001年の9月11日の同時多発テロ事件以後、状況に変化が見られる。大局的には反テロ作戦の継続の上から、また、アメリカが従来の南アジア外交の基本路線を、パキスタン一辺倒から発展著しいインド重視へと変更したことが背景としてある。印パの緊張は一進一退を続けながら、たとえば、2005年のパキスタン支配下のカシミールにおける地震に対して、インドが差し向けた救援をパキスタンが受け入れたこと、あるいは、印パ間の直行便国際バスが復活したことなど、カシミールを取り巻く環境に変化が生じていることを見逃してはならない。カシミールの動向は南アジアだけでなく中東・中央アジア情勢にも影響を及ぼし、正確な理解が必要である。
* 9月に予定されている訪印団の視察地には、重要訪問先としてこのカシミールが含まれている(画期的!)。この講演により複雑な背景の基本理解を深めて頂きたい。
日時:平成19年7月6日(金)18:20〜20:30(18時開場)
会場:大阪市立総合学習センター(大阪駅前第2ビル 5階第3研修室)
電話06−6345−5000 FAX 06-6345-5019
会費:千円 二次会(侃々諤々の交流会)は、同ビル二階北西隅「北大会館」
講師:戸沢健次 愛媛大学教授・本会理事・NPO日印友好協会副理事長
演題:インドにおける最近のカシミール動向
<講師紹介>昭和24年愛知県生まれ。49年京都大学法学部卒業、53年同大学院法学研究科博士課程中途退学、愛媛大学法文学部助手、その後講師、助教授を経て63年教授。この間コロンビア大学、ロンドンスクール・オブ・エコノミックスなどの客員研究員。専攻は政治思想史、比較政治学。インドとのかかわりも深く、毎年有志学生を引率して訪印し、日印の相互理解の促進に貢献している。共著に、『サッチャーの遺産』晃洋書房、『アメリカ民主政治の特質』松柏社、『ブレアのイラク戦争』朝日新聞社、『現代イギリス政治』成文堂など。近刊の岡本幸治『インド世界を読む』(創成社新書、例会で販売)では、インド経済発展の理解に不可欠である第13章「印僑問題」を執筆。